プレッシャー
「くっ……!」
剣とドライバー。圧倒的なリーチの差、武器としての性能差も歴然。だというのに
「(なんで俺は攻めきれない!?むしろ防戦を強いられている!?)」
ただ無造作に近寄っては振り下ろす、近寄っては振り下ろす。そんな単調な動きしか深海はしてきていない。
しかし、近づいたら死ぬ、そんな予感がしてならない。
「どうしたの?調子が悪いのかしら?」
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
いつのまにか息が上がっている。これほどプレッシャーを感じたのは生まれて初めてだ。
「………」
深海が一歩歩み寄る。ゾワッと背筋に不快感を感じ、咄嗟に飛び退く。が
「うわっ!?」
何かに躓き、視界が横倒しになる。頭を打つ、そう思った瞬間、深海から抱き寄せられドライバーを首に突きつけられる。
「相手から目を逸らさないのは良いけれど、周りも疎かにしちゃダメよ」
そう言って僕を立たせると僕が躓いたであろう工具箱を片付けはじめる。
「特に私みたいな小細工が得意な相手は」
そう言われてあの日を思い出す。そう、彼女は白兵戦が得意なだけじゃ無い。必要とあらば爆弾も暗器も、あらゆる手段を使う。
「相手は私みたいな連中ばかりなんだから」
「あ、ああ……肝に銘じておく」
「今日はここまで。次は……ん……頻度はどのくらいなら身体に支障無いかしら」
おそらく今回の様な訓練を毎回やるのだろう。それを踏まえて考えると
「平日は毎日、はどうだ?」
「………平気なの?」
「いつまた襲われるかわからない。早く成長できるなら」
「その意気や良し。なら休日は訓練も休みにしましょうか。厳しく行くから覚悟しておきなさい」
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「ふう」
トレーニングルームを出て自室に戻る。桐堂の反応は隣の部屋、彼も自室に戻った様だ。
「…………」
急遽手合わせをすることになったが、彼の実力は悲惨なモノだった。しかしまあ、戦闘経験があの日の一度しかないのだからそれは仕方ない。
問題は彼の右目、聖杯が起動していなかったことだ。
「(私に対して手を抜いている様子は無かった)」
幸い戦いの最中で女がどうこうとか言うタイプじゃなかったのは良かったが、恐らく何かしらのトリガー、キッカケが必要なのだろう。
「(それと……)」
聖杯とは別に気になる能力を持つ生徒がいる。
蒼炎の能力を持つ燕翔寺だ。発火能力はさほど珍しくは無いが青い炎、他の炎よりもより高温で火力のあるモノは珍しい。それに、あれはただの強い炎では無い様にも思える。
「(酸素や可燃物とはまた違ったものを燃やしている様な気がする)」
できれば桐堂と共に成長を促したいものだ。
「(そういえば)」
歳上の知人がこの学園に以前通っていたのを思い出す。すこし鈍臭い子で何故か年下の私に教えを乞う様な人物。
「(名簿には名前はなかったけれど……)」
そう考えて頭を振る。
「(そうだ、彼女の年齢ならとうに卒業しているか)」




