グランサー・ジャベリン
カチッ、カチカチッ
「…………」
傘草から受け取った今日の授業の録画データを部屋の備え付けの端末では無く、家から持ってきた昔ながらのノートパソコンに挿す。
あの理事長は兎も角、この学園内ではあまり安心出来ない。逆探知なんかされたら溜まったものじゃ無い。
「(まあ、それは置いておいて……)」
早速閲覧する。シュミレーションルームでも少し見たけど、これならもっと細部まで確認できる。
「………やっぱり」
燕翔寺が私達を助けようと最初に放った炎より、桐堂と合流してから放った2度目の炎の方が威力がある。
「(それに)」
彼女にカーソルを合わせ、クリックする。
燕翔寺智恵 Level42
このLevelっていうのがイマイチ分からないけれど、格段にこの数値が上昇している。
傘草に確認を取っても今日見た中で一番高かった数値は6だと言っていた。その生徒が燕翔寺だったと仮定してもその数値は4倍にもなっている。
「(私の数値は、まあ1って事にしてもらってるけど)」
そしてシュミレーションルームで起きた異変。その時必ず、桐堂の右目の虹彩は金色に変化している。
「………」
一時停止し、桐堂の目を拡大してみる。それで何か分かるかもしれない。その時だった。
『覗きとは、感心しませんね』
画面が暗転し、咄嗟にPCを破壊する。
「(侵入された?チェックミス?)」
違う。いくら配属したての新人といえど傘草はそういう事だけは怠らない事を私は良く知っている。
「オルキヌス!」
『はいはい』
自身の半身に身を委ねる。私1人では、と心の中で何かが叫んでいる。
「ま、ボクも流石にヤバい状況だと思うよ」
オルキヌスは瑠花とは違うその赤い瞳で忌々しそうに窓の外を眺める。そこには天使を彷彿とさせる一つの影が。
「さて……」
放出したエレミュートを右手で収束、槍の様に変形させ振りかぶる。
「逃がすか……!」
そうして放たれた漆黒の槍は狂いなく夜の闇を切り裂き、標的を穿つ。が
「チッ、化け物め」
確かに槍は影を貫いた。しかし影はまるでスライムの様に、空いた穴は瞬時に塞がり元の姿に戻っていた。
死水の槍を受けて無事な奴が人の子らが生み出した玩具では太刀打ちできるはずがない。
飛び道具を失った以上、直接乗り込むしかない。そう判断し窓枠に足をかけるが時すでに遅し、天使の影はすでに姿を消していた。
『もういいわ、オルキヌス』
「はぁ?まだ近くにいるはずだよ。それにボクまだ満足してないんだ、け……ど……」
無理矢理オルキヌスの意識を抑え込み主導権を取り戻す。かつては強大な化け物だった彼女も今はただのコア。この世にへばりついた魂の残滓、残りカスの様なもの。コントロールする事自体はさほど難しくはない。
「(それよりも)」
ウィルス経由とかでもなく電子機器に干渉してくる謎の人物。
『覗き見とは、感心しませんね』
それにあの口ぶり
「(桐堂の正体に気づいている……?)」
間違いなく奴は偉大なる聖十字の、それもトップクラスのメンバー。恐らくこの学園でまともに太刀打ちできるのは
「(私だけ、か)」
思わず舌打ちをする。学園生として潜入するために必要無いと判断したものは殆ど本島に置いてきた。この人工島にあるのは折れたままの小夜時雨と予備のブレード、ハンドガン、そして僅かな爆薬のみ。
「(厄介なことになったわね……)」




