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グレイル・フォース・アイズ  作者: 九六式
秘めた力の片鱗
21/108

遭遇





「ご馳走様。美味しかった」

「お粗末さま」

「それで、今日は何の用なんだ?」


 ご馳走を頂いたことだし、本題に入ってもらう。ケーキを食わせることが本題ではないはずだ。


「今後の方針を話しておこうと思ってね」

「方針」


 皿を下げられ、今度はコーヒーが置かれる。コーヒーのいい匂いが鼻をくすぐる。おそらくこれもオリジナルだ。


「甲本霧、正確に言うと彼女に憑依していた寄生体の襲撃は何も単独犯では無いわ。もっと組織的な犯行」

「組織……深海達みたいな?」

「まあ、概ねそうね。どちらにせよ【聖杯】を与えられた貴方にとっては敵になる存在。先に教えておくわ」


 そう言って彼女は紙のコースターにペンで何かを描く。



 ソレは十字架の紋様が描かれた、羽の生えた卵。それだけでは無い、至る所に目玉が描かれている。


「(なんだ、これは……)」


 一見ただのエンブレム。しかし何故かその絵からは途轍もなく悍ましい何かを感じる。


「【偉大なる聖十字(グランド・クロス)】。気色悪いカルト団体みたいなものよ」

「グランド・クロス……」


 詳しくは知らないが、確か不吉の象徴とされるものだった筈。それをわざわざ組織名にするあたりマトモな人々ではなさそうだ。


「基本的に襲撃者は私が対処する。私1人で対処しきれない場合も学園には他のメンバーが忍び込んでるから問題は無い。けど」

「けど……?」

「最悪の場合、私達護衛が突破される可能性もある」


 あれだけの凄腕な深海達を突破する襲撃者なんか考えたくも無いが、あり得ないとは言い難い。


「その時はどうすれば……?」

「その場合、貴方には時間稼ぎをしてもらう必要がある。倒す必要は無い、私達護衛の誰かがたどり着かまで耐えてくれるだけでいい」


 「だから」と続けて彼女はあるモノを僕に投げ渡す。それはカーボンで出来た剣の様なモノだった。


「ダミー・ブレード、訓練用の剣よ」

「ダミー・ブレード……」


 形状的には細身の西洋剣の様なモノで、軽く振っただけでも扱い易さがわかる。


「私が貴方を鍛える。最低限身を守れる程度にね。学園にも交渉して一年目は対人戦の訓練を多く取り入れてもらう事になってる。ハンターにとってはあまり実践では役に立たないかもしれないけれど、順位があって明確な目安になるし、学生には結構人気の授業らしいわ」

「なるほど……」


 刺客と少しでも渡り合うための対人戦か。


「それと、外出する際は私も連れて行く様に。ある程度の行動範囲なら察知できるけれど流石に遠出されたら分からないわ」

「わかった」


 深海は僕の返答に頷くとコーヒーをグイっと飲み干し、席を立つ。


「時間取らせて悪かったわね。寮まで送るわ」

「ああ」


 そうして店を出る。見送る紅葉さんに手を振りながら一歩踏み出した時だ。


 ガキィン


 何が硬いもの同士がぶつかり合う音が目の前で鳴り響く。それは深海の刀と、これまた見覚えのない実体剣だった。


「こう言うことがあるから、外出は気をつけなさい」

「ははっ、納得だ……」


 深海がそのまま体重を込めて押し除けると、相手はクルクルと回りながら優雅に着地する。


「おや、ボディーガードが居ましたか」

「居て悪かったわね」

「いえいえ」


 男は会釈をしながらニヤリと笑う。


「楽しみが増えて嬉しいですよ」

「あっそ」


 間髪入れずに深海は腰のバッグから拳銃を取り出すと発砲する。


「中々に過激なお嬢さんだ。しかし」


 そう言って男は容易く弾丸を全て弾き返す。


「こんなオモチャでは私には届きません」


 しかし既に深海の姿は無い。


「ん?ぐぼぁっ!?」


 その直後、男の体が宙を舞う。


「生憎と、自分より遅い飛び道具なんか信用してないの」

 

 恐ろしく速い跳び膝蹴りが男の腹に命中していた。深海はその勢いのままクルリと回転すると男を地面に蹴り落とす。


「このぐらいはできる様になってほしいわね」

「んな無茶な」


 明らかに人間離れし過ぎた動きにドン引きする。しかし男は何事もなかったかの様にすくっと起き上がる。


「まあ、知っての通りフォリンクリに物理的なダメージはあまり通らないけれど」


 そう言って深海は上に向かって指を刺す。


「頭上注意よ」

「っ!?」


 ドズッ


 次の瞬間、目に映ったのは刀に頭から串刺しにされた男の姿だった。


 思わず吐きそうになる。何度見ても人が死ぬのを眺めるのは慣れない。慣れたく無い。


「すまない、深海……」

「謝らなくていい。おかしいのは私達だから」


 そう言って彼女は男の心臓部に手を突っ込み、トドメを刺すと刀を引き抜き、鞘に納める。


「帰りましょうか」











 

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