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グレイル・フォース・アイズ  作者: 九六式
交差する運命、深みの使者
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ディープ・ブルー





 甲本と謎の集団に襲われた次の日、日常はしっかり元の姿に戻っていた。


 あれだけ派手に人が死にまくったというのに、誰1人死体として見つかっていない。


 そう、誰1人として。


 破壊された校舎も元通り、まるで最初からあんな出来事なんて無かったかのように。勿論あのフォリンクリの姿もない。


「おっはよぅ!」


 そしてその平和さをさらに知らしめる声。

 朝から元気に勢いよく教室に入る女子生徒、道尾。


「(まあ、遅刻ギリギリなのだが)」


「おはよう御座います、道尾様」

「早く席に着け道尾」

「…………」


 まっすぐこちらに向かう道尾を止め、自分の席に行く様に指示する。もう傘草先生が来てしまう。


 ふとある席を見る。そこには一つ、ポツリと空席があった。昨日の事件の当事者、甲本の席だ。


 あの後、緊急で集会があり甲本がハウンドの誤操作で大怪我を負い、入院したと知らされた。


 しかし、僕は知っている。この学園で起こった信じがたい出来事を。


 事故ではない。甲本はオルカによって始末された。しかし、どう言うわけか意識は失っているものの命に別状はないらしい。


 詰めが甘かったのか、それとも最初から殺すつもりはなく、寄生していたフォリンクリだけが標的だったのか。


 いずれにせよ、真実を知るのは彼女のみだ。姿を消してしまった以上、僕が知る術はない。


 ふと隣の少女が目を惹く。


 いつも通りカフェオレを飲む長い黒髪のクラスメイト、深海。その深海のメガネからチラッと見えた青い瞳。何もかも飲み込んでしまいそうな海の様な瞳。


 昨日のあの少女とよく似ている。


 顔はほとんど見えなかったし、声もどんなものだったのか思い出せない。不思議な暗示でもかけられたかの様に、特徴が頭に浮かばない。でも、その目だけはしっかりと覚えている。


 そして相変わらず、僕はその目を直視出来ない。


「昨日はその……ありがとう、深海」

「………なんの事だか分からないけど」


 しらばっくれる。まるで本当に何も知らないとばかりに。


「どいたしまして」


 海の様に静かで、それでいて少し自信ありげな態度。そしてどんな敵でもねじ伏せる圧倒的な力。


 オルカ。この少女との出会いが僕の運命を大きく動かして行くのだが、無論この時の僕はそんな事知る由も余裕もなかった。









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