表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グレイル・フォース・アイズ  作者: 九六式
交差する運命、深みの使者
16/108

オルカ・ザ・リッパー



 触手の化け物はすでに原型を留めないほどに崩壊し、その残骸も消え失せようとしていた。


「悪性エレミュート……」

「触らない方が良いわよ。即死はしないけれど、長生きしたいのなら」

「わ、わかった」

「ついてきて」


 そう言って歩き出す彼女に仕方なく従い、着いていく。


「(それにしても……)」


 これほどの騒ぎに誰も気づいていないとは。こんなこと、あり得るのだろうか。


 何故この化狩学園都市が人工島、陸と離れた海上に作られたか。それはフォリンクリからの進行を逃れ、未来の戦士達を安全且つ確実に育てる為だ。


 つまり警備はそこいらの学校と比べ物にならない。


「(だと言うのに……)」


 全く音沙汰がない。彼女に始末された男達の死体なんか見つかったら大騒ぎになるはず。


「妙だな……」

「どうかした?」

「いや、警備が緩いというか……なんというか」


 主犯は甲本の中にいたアイツかもしれないが、他のメンバーはこれで全員なのか?


「どうやらその目は飾りじゃないようね。大丈夫よ、今からその違和感の正体を拝みにいくから」


 そう言われたら僕が言うことは何もない。大人しくついていく。


 辿り着いたのは通信室だった。彼女はドアを勢いよく開け放つと中にいた人物に向かって銃を向ける。


「ひっ!?」

「動くな」

「ひぃぃぃぃぃぃ!」


 足を滑らそうとしながら逃げ出す男の足を容赦なく撃ち抜く。撃たれた男は崩れる様に床に這いつくばる。


「動くなって言った筈よ」


 ナイフの様なものを素早く取り出すと四肢をそれぞれ切り落とし、ダルマにする。 


「警報自体は機能していたみたいだけど、コイツがそれを妨害していた様ね。それにあの場は一種の結界の様なものになっていたみたい」


 そう言って彼女は目の前の通信機器には目もくれず、デスクに突き刺さった十字架を引き抜き、握り砕く。


「全く、面倒なこと押し付けられたものね」


 少女は悪態をつくと、男の心臓部にナイフを突き刺しトドメを刺す。今日だけで何人も人が死んだのを見た。目の前で容易く人の命が失われることに憂鬱な気持ちになる。


「綺麗な目ね」

「え?」


 気づけば少女が僕の目を下から覗き込む様に見つめていた。深い海を連想させる青い目だ。


「目立った外傷もなし。新生活が始まって早々、災難だったわね。ま、無事でよかったわ」


 そう言って彼女は背を向ける。


「それじゃあね」

「待ってくれ!」


 その場を去ろうとする彼女を引き止める。何はともあれ、彼女は僕の、命の恩人だ。代わりに返せるものなんて無いが、それでも恩人の名前すら知らないでいるのは恩知らずでは無いだろうか。


「その、君の名前は「オルカ」へ?」

「特別危険現象対策部【烏銀小隊(うぎんしょうたい)】遊撃班、オルカ」


 彼女の名はオルカと言うらしい。少なくとも本名では無いのは確実だが。


「今日はありがとう、オルカさん」

「気にしないで。それが私の仕事だから」

「そうか……」


 少し気を落とす僕を察したのかやれやれと肩をすくめ


「また会えるわよ」


 彼女がそう言った時、何処からか声が。


「桐堂様!」

「燕翔寺?」


 燕翔寺だけでは無い、安良川や道尾もこちらに駆け寄ってきていた。


「もう帰っちまったかと思ったぜ」

「置いてくなんて酷い〜〜!」

「お待たせしました、桐堂様」


 ハハと笑いながらオルカの方を振り返る。が、そこには最初から誰もいなかったかの様に、彼女の姿は跡形もなく消えていた。


「どうかされましたか?」

「………いや、なんでも無い」


 燕翔寺の声になんでも無い普通の日常に自分が戻ってきた様に感じた。






 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ