慈悲の刃
呆気なく破壊されたライローを見下ろしながら、信じられないとばかりに固唾を飲む甲本。
そんな隙すらも彼女は見逃さない。立ち尽くすその肩を掴むと無理やり振り向かせ
ズブッ
甲本の喉笛を刀で貫き
「ふんっ」
引き抜く。直後、鮮血が吹き出す。
「ごぼっ、ごっ」
貫かれた喉を抑えながら夥しい量の血を吐き出す。そんな甲本を見つめながら彼女は刀についた血を払う。
「苦しい?」
「ぐっ、ごぼっ」
「………そう。なら、楽にしてあげる」
「待ってくれ!」
一歩踏み込み刀を振り上げる彼女を僕は必死に止める。
「何も殺す必要は、無いだろ……!」
「…………はぁ」
彼女は振り返ると明らかに僕をバカにした様な目で見る。
「さっきまで自分を殺そうとした相手に、慈悲深いこと」
「うっ……」
言い淀む。そうだ、彼女の言う通り甲本は僕を殺そうとしていた。それに目の前の彼女がいなければ死んでいたのは僕の方だ。
人を殺そうとした奴を相手が死ななかったからと言って許せるわけが無い。逆に殺されたって文句なんて言えない。
「(けど……)」
人間同士が殺し合うのは絶対に間違ってる。
彼女に向き直り、言い返そうとしたその時だ
「なっ……」
「チッ。やっぱりね」
再び僕を庇う様に彼女は構える。その視線の先には
「ぐじゅるるるっ」
全身から夥しい数の触手が湧き出した、かつて甲本だったモノだった。




