始末屋
「それは、どうかしら」
もうダメだと諦めかけたその時、凛とした声が静かに響き渡る。
同時に僕を囲んでいた集団がバタバタ倒れ出す。
「(これは……)」
その倒れた人物達の胸元には例外なく黒い矢の様な物が突き刺さっていた。
「チッ!」
甲本は咄嗟にライローを構えるが黒い影は落下しながらそれをすり抜ける様に甲本を斬りつけ、頬を掠める。
「アンタ、何者」
「…………」
躱したものの、先程まで余裕そうだった甲本の顔つきが明らかに警戒の色に変わる。
「怪我は無い?」
「あ、ああ……」
「良かった、間に合ったみたいね」
突如現れた少女の目は優しく微笑む。目深に黒い帽子を被り、口元は黒いマスクで覆われていて顔はほとんど見えない。
しかし、背丈は僕よりも低く、声も高くてかなり若い印象だ。
「後ろに下がってなさい。私が守ってあげる」
そう言って甲本の前に立ちはだかる。
「………へぇ、アンタそんなオシャレなだけの時代遅れな武器でアタシ達と勝負すんの?」
甲本の言葉にハッとする。彼女の右手には日本刀型の実体剣。この刀がどんな物か分からないが、ライローほどの破壊力は無いだろう。それに
「「………」」
今の奇襲を免れた奴も数人残っている。勝算はかなり低い様に見える。しかし
「勿論」
少女はそう言って一歩も動かない。それどころか少し笑っている。
「あっそ。じゃあ先に死ねば?」
「シャァッ!」
「シィッ!」
甲本の一言と共に2人が飛びかかる。
速い。まるで瞬間移動、全く目で追えなかった。しかし、少女の反応はもっと速かった。
「遅い」
気づけば1人は喉に黒いナイフが突き刺され、もう1人は肩から腰にかけて斜めにバッサリ切り捨てられている。
悲鳴を上げる間も与えず、ほぼ同時に2人も葬ってしまった。




