切り裂く者
屋敷に上がると燕翔寺に案内され居間に通されるとそこには家主であり飛燕グループのトップ、そして燕翔寺の父親である【燕翔寺 不知火】さんが佇んでいた。
「君達が、智恵の友人かな?」
若くして飛燕の長となった超エリート。それがこの不知火という男だ。ハウンドの開発に力を尽くしてるだけでなく、本人もまた一流のハンターと聞く。
「っ……」
にこやかに笑っているだけ。その筈なのに、この気迫。燕翔寺の高いポテンシャルにも納得がいく。
「特に桐堂廻影くん。そして、深海瑠花さん。君たち2人のことは智恵からよく聞いているよ」
「お、お父様……!」
燕翔寺は抗議するが旭さんは笑って流す。
「皆さんを案内してあげなさい」
ゾロゾロと現れた召使いさんたちがそれぞれの部屋へと先導するが、僕と深海、そして燕翔寺だけが居間に取り残された。
そして、不知火さんの声がドスの聞いた重苦しいものとなる。
「………時花の当主から話は聞いている」
「そう」
深海が適当な返事をした次の瞬間、青白い閃光が走る。
「よもやあのオルキヌスが貴様だとはな」
「お父様!?」
ハウンドの刃を深海の首に突きつけていた。が、深海は避けようともせず鼻で笑う。
「えっと、どういった関係なんだ?」
「私も詳しくは知らないわ。ただ……」
深海の目が見開かれる。不思議に思い視線の先を追うと
「あっ、えっ、はぁっ……」
「どうしたの?智恵」
「はぁっ、はぁっ……!」
「智恵……?」
燕翔寺の方へ深海が歩み寄った次の瞬間
プシュッ
鮮血が舞う。
なぜか燕翔寺が刀を持っていて、深海の腕を斬りつけていた。
「(バカな……)」
いくら何でも速すぎる。しかし、燕翔寺の特徴とも言えるあの青い炎は纏っていない。あくまでただの斬撃。明らかに殺意のこもった攻撃だが、それにしては炎を纏っていないのが少し妙だ。
筋を切られたのかダラリと垂れ下がり、握力を失った右手から銃が落ちる。それを何処か他人事の様に、静かに一瞥すると、深海は正面に佇む燕翔寺と、その奥の不知火さんを睨みつける。
「お前、智恵に何をした」
「何もしていないさ。ただ強いていうなら、そうだね」
不知火さんは、まるで心のないロボットのように冷たい目でこちらを見据える。
「最初からそうだった。とだけ、言っておこうか」




