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グレイル・フォース・アイズ  作者: 九六式
サマーバケイション!
104/108

ラピスラズリ







「それで話って?香織ちゃん」

「その件、瑠花は薄々勘づいてると思いますが」

「まあ、こんな目に遭えばね」


 本来オルキヌス、深海しか持ち得ない死水を扱う敵。


「冥海の遣い、ね」


 ハァ、とため息をつきながら深海はそう呟く。 


「それが今回の襲撃者、か」

「違うわ」

「え?」


 そう言って深海は目の前の香織さんを睨む。


「私が首を刎ねてやった奴は時花の傀儡。コイツらの代わりに外敵を駆逐する小間使い」

「あー、誤認されちゃったわけだ」


 そう言って紅葉さんは苦笑いする。


「黒銀の製造法を知っているのは時花だけ。アタシ達対策部の扱う兵器は香織ちゃんから提供されたものなんだよ〜?」


 想像以上に香織さんはすごい人だった。ただ深海を何と誤認したかが気になる。それが冥海の遣いとやらなのか?


「ここ最近、本島では死者が急増しています。そしてその殆どが、現場に妙な粘液が残されているのです」

「それが死水とそっくりだと。で、本家の連中は?死んだ私が祟ってきたとか言ってんじゃない?」

「恥ずかしながら」

「冗談のつもりだったのだけど」


 やれやれと首を振る深海。


「冥海の遣い。オルキヌスのコアを宿した私が、与えられた識別名みたいなものよ」

「オルカとは違うのか?」

「私が対策部に入っていなかったらオルカじゃなくその名で呼ばれてたでしょうね」


 要するに僕で言う「聖杯の御子」みたいなものらしい。


「つまり新しくオルキヌスのコアを宿したとされる人型フォリンクリが出現した、と言うことか」

「実際にコアを所持しているかは兎も角、そう言うことになります」


 さすが飲み込みが早い、と香織さんは微笑む。何しても褒めてくるなこの人。


「お2人は燕翔寺の屋敷に滞在するが予定かと思いますが、期間を延長するのがよろしいかと。向こうには私から話を通しておきますので、夏の間は屋敷でお過ごしください」

「ええ、そうさせてもらうわ」


 余計に動き回ればまた誤射を受けかねない。香織さんの言う通り、ここは時花や対策部の人たちに任せよう。


「………【紅珠(あけみ)】は元気かしら」

「はい。確か島の学園に通っていた筈ですよ」

「そう」


 聞きなれない名前に首を傾げると紅葉さんがニコニコしながらこっちを見ている。お姉さんに聞いてくれて良いんだよ?と目で訴えている様だ。


「えっと、紅葉さん」

「はいなんでしょう!」

「紅珠さん、とは?」

「よく聞いてくれました!!!」


 なんか紅葉さんっていかにも年上のお姉さん、って感じの見た目なのに中身はなんか人懐っこいワンコみたいな感じなんだよな。


「紅珠ちゃんは瑠花ちゃんの双子の妹だよ!青と赤!ま、双子の割にはあんまり似てないけどね!」

「紅葉さん、うるさい」


 ただなんとなく顔が良いんだろうなーということはわかる。時花家って戦闘力だけでなく顔面偏差値も高いのだろうか。


「ちなみにアタシとは名前に紅がつく同士、どちらがレッドにふさわしいかをめぐる宿敵同士……あだっ!?」

「どうでも良いから」


 足を踏まれたのか脛を蹴られたのか、紅葉さんが涙目になっている。


「さて。話も済んだし、帰りましょうか」

「そうだな」

「あっ……待って」


 席を立ち外に向かう深海を香織さんが引き止める。


「何」

「えっと……元気そうで良かった」


 ハァ、とため息をつくと深海は「じゃあね」と言って店を出ていく。


「御子様」


 深海を追って店を出ようとすると、僕も引き止められる。振り返ると香織さんは席を立ち、深々と頭を下げる。


「どうかあの子を、宜しくお願いします」

「……はい。僕も僕にできる範囲で、深海の助けになりたいと思っています」

「ありがとうございます、御子様」


 一度壊れてしまったモノは簡単には直せない。けど僕は、この2人の絆がいつか元に戻ることを祈っている。

 












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