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グレイル・フォース・アイズ  作者: 九六式
サマーバケイション!
103/108

よりどりみどり







「久しいですね、瑠璃(るり)


 瑠璃。深海が時花の姓だった頃の名だろうか。その名を聞いた瞬間目を細める。


「その名は捨てた」

「………そうでしたね」


 深海に拒絶され香織さんは寂しげに笑う。


「あなたを守れなかった私に、姉を名乗る資格は無い」

「良いから、そういうの」


 再び訪れる沈黙。重苦しい空気と先ほどの不快感で限界を迎えた僕は


「うおおえええええっ」

「ちょ、桐堂!?」

「っ!?」








________________________________________________








「た、助かった……ありがとう、深海」

「ごめんなさい、私としたことが……」


 深海に体内の死水を抜かれ、香織さんに渡されたお茶を飲み、漸く落ち着いた僕は座って一息つく。


「えっと、時花香織さん、ですよね?」

「はい、時花香織です。御子様、お会いできて嬉しく思います」


 顔を寄せられドギマギしてしまう。姉妹揃って顔が整っていて、直視できない。


「………言っておくけどその人、人妻だから」

「え?」


 一瞬深海の言葉が理解できず、頭がフリーズする。


「(人妻?)」


 深海の元姉。僕達と大して歳の離れていない彼女が、既婚者だと。


「ちょっと、何?ショック受けてるの?桐堂?ねぇ、桐堂?しっかりしなさい、大丈夫なの?」

「ハッ」


 危なかった。何がとは言わないが、とにかく危なかった。


「助かった。ありがとう、深海」

「ああ、そこからリセットするのね……本当に大丈夫かしら?」


 ともあれ、香織さんが来てくれなかったら今回ばかりは深海も危なかった。


「香織さんも、ありがとうございます」

「いいえこちらこそ、妹を助けていただきありがとうございます、御子様」


 それにしてもまさか憧れの人物が目の前にいるなんて、なんだか現実味が無いな。


「それで、護衛もつけずに何してるわけ?」

「……えっと、紅葉と待ち合わせをしていたのですが、瑠璃……いえ、瑠花の姿が見えたもので、つい追いかけてしまって」


 それを聞いて深海はまた目を細める。そして背後に向かって傘を振り下ろす。


「うおあっ!?」


 そこには傘を白刃取りで受け止める紅葉さんの姿が。


「ったく、どいつもこいつも……」


 ハァとため息をつく深海に「ごめんなさーい」と紅葉さんが縋り付く。


「場所を移しましょう。昼、食べ損ねたし」






________________________________________________








 とりあえず4人で近くのカフェに来たわけだが


「(で、これはなんなんだ?)」


 隣に深海、正面に香織さん、その隣に紅葉さん。控えめに言って全員素敵な女性達。


「目が、死ぬ……」

「しっかりしなさい。貴方は御子、この中で1番上の立場なのよ?」

「胃が死ぬ……」

「もう……」

「なんか夫婦みたいだねぇ〜?」

「はい、なんだか弟ができたみたいで嬉しいです」


 誰か、誰か助けてくれ。燕翔寺、メラノさん……いや、あの人たちも結構なお嬢様だった。














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