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グレイル・フォース・アイズ  作者: 九六式
サマーバケイション!
102/108

時ノ花






「…………」


 黒銀、だったか。深海が使う銃弾や小夜時雨と同じ材質。実体兵器でありながらフォリンクリを殺傷可能な金属。


 だが針は既に抜き取られた筈だ。となるとやはり僕の予想通り毒を盛られたか。


「(死水、悪性エレミュートの可能性はあり得なくはない)」


 深海は稀に残像の様なデコイを残し、姿を消す技を披露することがあるが、その時彼女は死水で作った短剣で自分の手のひらを傷つける。


 確か自分の血と死水を混ぜた血痕に気配を置き去りにするという物だった筈。


 一見死水が効かないからそんな芸当ができると思われそうだが、実は耐性が無かったとしたら?


 気づかれる前に奇襲を成功させているが、制限時間は?


 血と死水の混合物は時間が経ってもそのまま混合物のままなのか?


 否。


 そして思い出せ。深海の親を自称していたあの女を。テレサもまた悪性エレミュートを使っていた筈だ。そしてそのテレサが2度にわたって深海の槍を受けてどうなったか。


 答えは出た。


「あとは摘出するだけ……!」


 深海の左手を握り、目を閉じる。祈りを捧げる様に集中する。


 ドクンッと脈打つ何かを感じ、直後に途轍もない不快感が全身を襲う。


「うっ、おええええぇっ」


 咄嗟に深海から顔を背け、四つん這いになって吐く。唾液と胃液だけがこぼれ落ち、ちょうど昼ごはんを食べようとしていたタイミングだったことを思い出す。


 手足が震え、顔が青ざめて行くのがわかる。だが、ここで諦めるわけにはいかない。深海の息が少し落ち着いてきた。


「(効果はある。なら……!)」


 近くでベチャッと何かがこぼれ落ちる音が聞こる。音の方へ目を向けるとそこには黒い水たまりが。


「ハハハ、ボクもそろそろダウンしそうだ」


 それを最後に水たまりは風に吹かれ消えてしまう。体外で死水を維持できるほど深海に体力が残されていないのだ。


 いよいよ不味くなってきた。ヘイトを稼いでくれるオルキヌスが居ないとなれば、次に狙われるのは


「(僕か……!)」


 忙しない足音。何者かが駆け寄ってくる。針を撃ち尽くしたか。だが、近い。視界の端に人影が。さっきの手招きしていた店員だ。


 下卑た笑みを浮かべ、こちらに向かってきている。


 万事休す、そう覚悟したその時、誰かが僕の肩に触れる。


「諦めるのには、まだ早いですよ」


 その言葉と共に目に映る景色は影がさしたかの様に光を失い、耳に届くありとあらゆる音が消える。


 背後に立つ彼女が何者かは知らない。だが、そんなことは今はどうでも良い。


「これでどうだ……!」


 ドプンッと、何かが入ってくる感覚。一層増す不快感。だが……!


 光が刺し、音が蘇る。そして目の前の少女は


「ありがとう」


 と、一言告げると姿を消す。そして気付けば刺客の背後に回り込んでいて


断嘴(タチバサミ)


 細い2本の足に這わせるように、最小限に展開された死水のブレードで刺客の首を挟み込むと、容赦なくそのまま切断してしまう。


 ハッとして背後を振り向く。だが、そこには誰もいない。


「(あれは……)」


 カラン、コロン、と心地よい音が聞こえそちらを向くと番傘をクルクルと回しながら微笑む女性が。


 宝石を思わせる様な青い瞳に深海の地毛と同じ、白い髪。

 

 魔殺しの時花、その当主。唯一単独で大型フォリンクリとも対等に渡り合える史上最強の狩人。


「【時花(ときばな) 香織(かおり)】……」






 

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