姿なき射手
「ありがとうございましたー」
店員さんから謎に温かい目で見送られながら店を出る。目的は達成したわけだが、もう帰ってしまうのは流石に勿体無い気がする。
「お昼時ね。面倒だし、ここで済ませましょう」
「あ、ああ」
フードコートに着くと学園都市でもチラホラ見る様なチェーン店からあまり見ない定食屋まで様々な店が。
その中で1つ、手招きする人影が。
「っ!」
直後、肌を刺す様な感覚と脳裏に映る光景。首筋に深々と突き刺さる……
「ッ」
同時に深海が動いていた。指先に一瞬だけ展開した死水のブレードが鞭のようにしなり、飛来したナニカをはたき落とす。
「(針……!)」
脳裏に一瞬映った光景を思い返す。腹が突き刺さった角度からして射角は読める。が
「銃声は無かった。吹き矢かクロスボウ……おそらくそう言った古典的な類かしら」
ハッとして先ほど手招きしていた人物がいた店を見るが、そこにはすでに例の店員は居ない。
「うおっ!」
咄嗟に仰け反ると目の前を針が風を切って隣の柱に突き刺さる。
「(軌道は読める。避けるだけなら容易い。けど……!)」
この人混み、無闇に避ければ一般の人にも被害が及ぶ。
「ッ!」
言ってるそばから僕の後ろを親子連れが横切り、そんな事構いはしないとばかりに放たれる針。
多少鍛錬して、来ると分かっている僕と完全に不意打ちの親子。どちらがダメージが大きいかと言えばそれは間違いなく後者。
一瞬の出来事。だがそれは僕の判断を遅らせるには十分で
ドズッ
喰らう。筈だった針は間に挟まれた手のひらに阻まれ僕には届いていなかった。
「深海!」
「問題ない」
手のひらを貫通した針を抜き取ると地面に投げ捨て踏み潰す。
「今は余計なことを考えないで。まずは自分のことを優先して」
「あ、ああ」
深海は死水で形成した鎖をアンカー代わりに柱に撃ち込むと僕を抱えて1Fまで飛び降り、そのまま建物を出る。
「チッ」
舌打ちしながら深海はケートスに刺していた傘を抜き取ると死水でコーティングし開く。直後金属音の様なものが何度か鳴る。
「しつこいわね……」
普段なら爆弾なり槍なり使えるのだろうが、人が多い以上そうはいかない。
ケートスが1人でに動き出すと深海はそれに飛び乗り、僕も襟を掴まれ側車に乗せられる。
「用事も済んだし、さっさとズラかるわよ」
「ああ……!」




