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07 厄介事ほどそこら辺に転がってる物はない。

奈々副会長と廊下で対面してから数分後、俺と烈は生徒会室に案内された。

風紀委員会の幹部専用の部屋と同じようなイメージかな、とか思っていた俺の想像はこれまでに無い衝撃で打ち砕かれた。


そう、生徒会室の扉を開けるとそこは、メルヘンの世界だった。


壁紙は丸で絵本のようなタッチで描かれた風景、さらに備品全てが壁紙に合わせられた色をしている。


そして委員長の女版がお姫様のコスプレをしてイチゴの形をしたイスに腰掛けていた。


「あれ~ 奈々ちゃんその子らは~?」


本当に高校三年生か?

小学生低学年だろうどう見ても、喋り方だって幼いし、っていうか奈々さん(副会長)が巫女で委員長の妹(会長)がお姫様、この生徒会はコスプレイヤーの仲好し会か~?


「すいません、仕事を見られたので連れてきたんです」

「あ~ もしかして風紀委員?」

「はい」

「でも見ない顔だけど」

「新入生です、こちらが北条 秋人、その隣が岩裂 烈」

「へぇ~ お兄ちゃんの部下か~ 奈々ちゃんの事言わないでくれるかな~?」


いきなりのお願い、しかも自己紹介なしですか。


「おい、ふざけんじゃねぇーぞ! 私達の仕事横取りしといてお願いで済むかよ! 土下座しろ!」


いや、それは幾らなんでもストレートすぎないかな~

もっと言い方があると思うんだけど、それに俺の隣には奈々さんが居るんだけど~!」


「貴女! 会長に失礼でしょう!」

「んだとぉ~! 私はただでさえ機嫌が悪いんだよ! 今は!」


あー 俺に付き合わされたからか。


「口のきき方が分からないのかしら」


そう言って奈々副会長は両袖から短剣を取り出して構える。


「ほぉー 二刀流か、面白い……ッ!」


烈は傍に置いてあったコート掛けを手に持ち構える。

つーかコート掛けで戦おうというのか、相手は真剣だぞ。


生徒会室が二人の放つ刺々しい殺気で重苦しい空気で満ちた時、


「「いざ、参る!」」


二人は同時に開戦宣言をして、一歩を踏み出した瞬間だった。

突如ドアが開き、稜姫いつき先輩と委員長が入室してきたのだ。

二人の入室により、空気は流れた。


「あら、お兄ちゃん。なんの用かしら」

「俺の部下が世話になってると聞いて……」

「こんな下っ端の為にわざわざ風紀委員会の委員長が来るなんてねぇ~」


生徒会長はなんとも憎らしい口調で委員長に物申す、ホント兄妹喧嘩してたんだな。


「ただの部下じゃない、彼は新しい十二席だ」

「! へぇ~ 一匹狼の稜姫ちゃんの相棒か~」

「それに、校内の風紀を乱すのは頂けない、容認はできんぞ」

「では、私達生徒会に盾突くと?」

「察しろよ、妹」

「考えてよ、お兄ちゃん」


二人は火花散らし睨み合う、完全に俺らは蚊帳の外って感じだ。

そんな状況の打開を図っていたのは別に俺一人じゃなかった、稜姫先輩も烈、それに奈々副会長もだった。

共通意識を持っていた俺達は目で会話する。


(先輩、ここは年長者が切り出すのがいいかと)

(私は秋人に賛成だ! 一年が口出しできる状況じゃないしな)

(いや、私もあの中に入るのは気が引ける。ここは生徒の代表であるところの生徒会が副会長に)

(あ~ 稜姫ちゃんズル~イ、いま絶対逃げたよね? 私も嫌だよ~)


皆解決はしたいと思っていたが、どうも犠牲になる気はないらしい。


(でも、これなんとかしなきゃ前進しませんよ?)

(そうよ、だから先輩方頑張ってくださいよ)


烈は少し興奮が冷めて平常に戻ったようだ。

少し熱くなると性格も口調も変わるのが烈の悪いとこだ。


(何を言う、後輩も根性みせんか!)

(私も稜姫ちゃんと同意見)

(っていうか奈々副会長、稜姫先輩と一緒の時って口調とかキャラ設定変わってませんか?)

(別にいいじゃん、私は稜姫ちゃんの前ではこういうキャラがスタンダードなの)

(((へぇ~)))


稜姫先輩も含めて俺らは、そうなんだー。と心底思った。


そんな視線会議をしていると、委員長と生徒会長の舌戦に進展が起こった。


「あ~ お兄ちゃんの分からず屋! もう全面対決よ!」

「いいだろう受けてやる!」


あー なんかバトル展開ですね~

定番っていうか、なんていうか。

結局苦労するのは下の人間なんだよな。


「あのー 委員長。校内の風紀を守る俺たちがバトっていいんですかね~?」

「構わん、権力を我が物顔で振り回すロリっ子を懲らしめる為なら神とて許す!」 

「私はロリじゃないもん! ただ成長期が遅れてるだけの女の子なんだもん! それに風紀委員会が役に立ってないから奈々ちゃんが代わりに執行してあげてるのよ! 感謝されこそされ非難される覚えはないわ!」

「そんな越権行為が許されるとでも思っているのか!? 迷惑するのは副会長だぞ。可哀想に、非常識な上司を持つと部下は絶え間なく苦労を強いられるんだよな」


「なによ!」

「なんだよ!」


「「こうなったら、(稜姫!)(奈々ちゃん!)闘るぞ!」」


「「はい」」


稜姫先輩と奈々副会長は委員長と生徒会長の命令を受けて剣を交える。

神速、まさに二人の剣劇はそうだった。

風を裂き、火花を散らし、場の空気をさらに悪化させる。


「なぁ秋人、私達は何をすればいいんだろうな」

「さぁ、でも確実なのは。厄介事には首突っ込まない方が良いってことだろ」

「「はぁ~」」


さっきまでは稜姫先輩も奈々先輩もあんなに仲良かったのに、いざ仕事となるとホント容赦ないな~

公私の区別はくっきりと決めてるんだな。凄いんだが凄くないんだか分らん二人だ。


「お兄ちゃん、私達も始めましょうか?」

「手加減は、しないぞ?」


二人とも絶対零度をも超える冷たい笑みを浮かべた。

そこで俺と烈の意識は途絶える。





そして目が覚めたのは保健室のベッドだった。

そして何故か、何故か隣には烈があられもない姿で横になっている。


何コレ!?

なんの罰ゲームですかー!

こんなのちっとも嬉しくねぇーよ? 別に照れてるとかそういう次元のお話じゃないんだって、だってこれ今この状況で烈の目が覚めてみろよ。

死刑確定だよ、もうホント冗談抜きで俺死ぬから、しかもなんで俺の右腕ががっちりと抱かれてるんだよ!

変なフラグ立てんなコンチクショー!

誰もこんなウハウハなシチュ望んでねぇーって、誰一人として幸せになれないから、だから神様ヘルプ・ミーィィ~!


「あ~ なんだかよく寝た気がする」


そんな台詞を言って目を覚ました烈の視線が固まる、俺と目があったのだ。

ゼロ距離ではないものの、顔の距離は鉛筆一本も無い超至近距離。

お互いの呼吸がよく聞こえる。

そして烈の顔はどんどん赤くなり、目は混乱していく。


「キャーーーーー! 何してんだこの変態幼馴染がァァァァ!」


俺は言葉一つ発することさえできずに、意識がまた途絶えた。

なんか対決とか言っちゃって期待させてすいません!

次こそは、次こそは対決バトらさせます!

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