04 努々忘れてはいけない事 それは現実の過酷さですよ。(前)
―放課後―
俺は授業をサボった罰として反省文が宿題に追加されただけで済んだ。
そして俺のサボった授業内容は、この学園においての注意事項だったらしい、
俺が聞かされた内容とほぼ同じ事の説明があったのだ。
そしてどうも、この学園に第三者が入る事は不可能なんだそうだ。
理事長が最強の神経強化系だそうで、この学園を特殊な結界で覆っていて、第三者がそれに触れると何をしようとしていたのかを忘れて家に帰るんだそうだ。
だから、保護者には前もって来る事を学園側に知らせるようにとの事も言われたらしい、
そしてお優しい事に、転校届を三日後までに出せば試験もなしに好きな高校に転校させてくれんだとか。
そして俺は今、稜姫先輩に言われたとおりに大広間に来ている。
大広間は極々普通の教室、でもちょっと広かなというほどの造りだ。
大広間にはすでに何十人もの人が集まっていて、パイプイスに座っていた。
俺は一番後ろにポツンと置いてあるパイプイスに座った。
そしたら先程上の部屋で見た面々と稜姫先輩が入室して、黒板の前に置かれていたイスに座り、
「今から風紀委員会定例集会を始める」
と副委員長が声を上げる。
「そして今日は素晴らしい知らせがある事を前もって諸君に伝えたい、長らく空席だった十二席目がついに決まった」
その知らせを聞いた途端、大広間がざわめく。
「十二席に就くのは、北条秋人一年生だ」
その瞬間、視線が一番後ろに座っている俺に集まる。
しかも、殺気を帯びた敵対という部類に入るであろう物が。
一応呼ばれたので立ちあがると、一層視線が痛い。
「は、はい。北条です」
「さぁ、前に来て」
前に来ると稜姫先輩が立ち上がり、
「こいつが私の相棒になる、まだ新人だが五月雨に選ばれたんだ。諸君らも文句は無いとは思うが念のために言っておく、私もこいつを選んだ事を忘れないでほしい」
稜姫先輩の言葉を聞くと、なんとも悔しいという表情を浮かべ、視界に入る風紀委員全員が拳を握っている。
お、俺。間違いなく狙われてるよね?
もう憎くて憎くて堪らない顔してるしね、
これ、俺、俺ホントヤバイよォォ。
「さぁ、意気ごみでも言ってやれ」
と稜姫先輩は俺の背中を押す。
いや、これ、下手に刺激したらホント爆発しそうなんですけど、
言えないって、一言たりとも許してくれそうにないんですけど、
そう思う俺は小声で稜姫先輩に尋ねる。
「辞退する事は出来るんですかね?」
「私の想いを踏みにじると言うのか」
と腰にぶら下げている太刀の白刃をチラリと見せる。
その意味は重々承知できた。
反論は許さんという事だ。
「えぇ~ じゃ、若輩者ですが、風紀委員として精一杯頑張っていきたいと思います」
若干声を震わせながら俺は勇気を振り絞って言った。
それを聞いて俺の耳には歯ぎしりの音と共に、稜姫先輩の「よく言った」というほめ言葉が聞こえた。
―その後、幹部室―
「いや~ 改めてようこそ風紀委員会へ、稜姫から詳しい事は聞いているだろ?」
「はい。大まかな事は」
「何か質問はあるかな?」
「さっきも言ってたんですけど、十二席ってなんですか?」
「十二席ってのはね。君の役職さ。奇数の席に座る人間が自分の補佐として偶数の席を与える。君は十二席だから、十一席に座る稜姫の補佐だね」
「だから稜姫先輩が僕を気に入ったって」
「まぁそう言う事だね。風紀委員会は基本フリーだからさ、校則違反してる奴見つけたら捕まえといてよ」
「そんなんでいいですか?」
「いいの、いいの、これが委員長の方針だから。ね?」
白髪の少年改め、委員長はコクッとうなずく。
どうやら口数が少ないようで、金髪の少年っていうか副委員長が殆ど進行を任されているらしい。
「まっ、稜姫の元で精進してね。ってことで今回はお開き~」
副委員長はなんとも軽い口調で終了を宣言した。
そして次々と幹部が退席している中、稜姫先輩は最後まで残っていた。
「え~と、行かないんですか?」
「我々は最後に出るんだ」
あー 十一席と十二席だから。
結構厳しいな~
そして部屋に残ったのは俺と先輩の二人。
「さぁ行くぞ」
「はい」
―下駄箱―
「今日はもう帰れ、入学式もあったし疲れたろ?」
「いいんですか?」
「あぁ、その変わり明日からはビシバシ働いてもらうぞ」
「了解、じゃあお先に失礼します」
「あぁ」
こうして俺の高校初日は幕を閉じた。
そして帰宅したのは七時過ぎ、さぁ宿題をしようと宿題を確認すると、
進学校だからだろうか、宿題の量が半端伽ない。
しかも反省文もときたら、これ今日中に寝れるのか!? ってくらいの量だった。
結局、俺がベッドに横になれたのは日付が変わって一時間と三十七分後だった。
(前)っていうのは前編って意味です