35 本当の意味での策士は一握りしかいない。
―理事長室―
「で、理事長。俺達を招いてくれた理由は?」
秋人は理事長に問う。
「実はのぉ~ そろそろこの学園の秘密を話そうかと思っての」
「秘密って、そんなモンがあんの?」
「烈君は口がちと悪いのぉ~」
「んな事は聞いてない」
烈はいつも以上に勝気な部分が出ていた。
「烈、少し慎め。それと理事長、そろそろ本題に」
「うむ、そうじゃの。それで秋人君、彼は元気そうじゃったか?」
「彼?」
秋人は頭上に?を浮かべる。
それを見ると、理事長は笑みを浮かべ、「君の中におる存在の事じゃよ」と少年の様な笑顔を浮かべる。
秋人はそれを聞くと、ハッ。とした表情をする。
「知ってたんですか?」
「知っておったよ。じゃから稜姫君は君を風紀委員会へ誘った」
秋人は理事長の言葉を聞いて稜姫へ視線を移す。
「知ってたんですか?」
「あぁ、言い訳になるかもしれないが……名前しか知らなかったんだ」
「そう、ですか」
それは最初であった時は"知らなかった"という事だ。
だから、秋人は責める気は起きなかった。
いや、それ以前に知っていたとしても秋人は稜姫を責める気は皆無だった。
「それでのぉ、実はこの世界には"天使"や"悪魔"や"精霊" "神"と呼ばれる存在は実在するんじゃよ」
「えぇ、そういう風にさっき言ってましたけど」
「まだ疑っとるの、じゃが」
理事長は手のひらを返すと、光がポォ手のひらの上にと現れた。
「これは?」
「精霊じゃよ、ほれ」
光は秋人の周りをクルクル回り始めた。
そして時折、思わぬほうへ行ったり来たり、まるで意思があるように。
「それに、君も不可思議な経験をしてるじゃろ?」
「まぁ、確かに」
そう、考えれば"オレ"なんて存在は本来ありえない。
そもそも二重人格なる物でさえ、怪しい物なんだから。
「その不可思議なモノ達がこの学園の土地に宿っておる、居座っていると言ってもいいかの」
「それが御南茂学園の秘密?」
「いや、本当の秘密は。三年の卒業試験の内容じゃよ」
「内容?」
「そう、死人が必ず出る内容じゃからの」
「!?」
「そんな、学生の領分を越えてますよ!」
「酷い。と言いたいのかの?」
理事長は無表情、烈は少し思考が鈍っているように見える。
「当たり前だ! アンタはそれでも教育者か!」
「フォッフォッフォッフォ。そうじゃよ」
「仕方のない事なんだ、そればかりは逃れようのない運命なんだよ」
「でも!」
「酷い? 何を言っている。現実を見ろ」
理事長は目を細め秋人を叱るように言葉を紡いだ。
「秋人、少し落ち着けよ」
烈は秋人の事を心配して肩に手を置き、秋人は少し自分が冷静さを取り戻せた事に気が付き「ありがとう」と烈に感謝の言葉を掛け、秋人は何かを決心した様な表情で一歩前出た。