34 人生の先輩には敬意を。
『それがオレという存在だ。で、どうだ? 力を望むか?』
……俺は―――
俺は人を守る力が欲しい。
『そうか、だが守るという事は壊すという事と同義なのは理解しているな?』
勿論。
『そうか、今回は力だけを貸してやるよ。面白そうだからな』
時間はどれくらいだ?
『そうだな、せいぜい三十秒くらいだろう』
前よりか短いな。
『今回オレがサポートしないからな、仕方ない。健闘を祈るよ…俺』
あぁ見てやがれ、俺がやればできる子ってトコを見せてやるよ。オレ
瞬間、身体の奥底から暖かい何かが湧き上がってくるのを秋人は時間する、
またそれと同時に体内に刺すような痛みが現れ始めた。
「秋、人?」
烈は目を疑う、秋人の瞳の色が金色に変化している事に、秋人が放つ神秘的威圧に。
なによりも一番驚いた事は、堂々と二本脚を地につけて立っていた事だ。
「理事共! 俺が相手になってやる!」
あれー! なんか口調が変わってるんですけど!
『神格化の影響ってとこだな、所謂"ハイ"ってやつだ』
オレの言う事に少し不満を感じながらも秋人は五月雨を抜刀、地面を力ずよく蹴って理事目がけて駆ける。
一瞬にして桑井理事の目の前に移動した秋人は峰で老体に鞭を打つかの如く叩きつける。
『お~ 俺は鬼畜だね~ 老人を甚振るなんて』
変な言い方するな、本当に俺が鬼畜みたいじゃないか!
『違うのかい? 誰がどう見ても老人に押しかかる若者だぜ』
……もういい。
「桑井理事!」
「お前も邪魔だ」
「な、ぐっ!」
直後、理事の一人が校門の方へ吹き飛ぶ。
委員長や会長、稜姫や烈、理事一同はただ見る事しかできなかった。
「いやはや、これが北条 秋人。『神の器』の力か」
「! 理事長」
桑井理事の視線の先には……
「花壇の、おじいさん?」
「フォッフォッフォ、久しいのぉ~」
―『時間切れだ俺』―
「それにしても、『精霊化』『悪魔化』しても神には敵わんということかの。いやはや興味深い事この上ないのぉ」
「理事長、来るんなら前もって連絡してよ」
「おやおや、生徒会長に一々言わねばいかんのか? 儂が作った学園なのに」
「そうよ! 全然仕事してないじゃん! 全部生徒会(私たち)に押し付けて、老後の生活をエンジョイしてんだから!」
「老体に書類仕事は堪えるんじゃよ」
「花や木々の世話の方が何倍も疲れる! 肉体労働じゃん!」
「落ち着け……みっともない」
「お兄ちゃんは黙ってって!」
「まったく、実の祖父に向かって言うセリフかのぉ~ 孫に嫌われるのいやじゃわ」
なんていう漫才? というのが秋人と烈が思った第一印象だった。
「花壇のおじいさんは、理事長?」
「ピンポ~ン」
「若々しいですね」
「君ほどじゃないわい、秋人君」
「それにしても、精霊だの悪魔だの神だの。御南茂学園はいつから宗教専門学校になったんですか?」
「実際にいるんじゃから、宗教とは関係ないわい」
「いるの? 精霊とか悪魔とか神とか」
「おるよ」
「いるね♪」
「……いる」
「存在はしているな」
理事長、会長、委員長、稜姫の言葉に秋人も烈も豆でっぽを食らった顔をしている。
その表情を見た委員長以外の人は悪戯な笑みを浮かべ、満足げに一息吐く。
「詳しく話しては、くれるんですか?」
「無理じゃの」
「無理☆」
「……」
「不可能だな」
期待ははずれの返答に少しがっかりするが、秋人はある事を思い出す。
オレに聞いてみればいいじゃないか。と。
なぁ、教えてくれよ。
『やだね。その方が面白そうだから』
お前もSか!
『ドをつけ忘れるな』
認めたよコイツ。
「それよりも、理事長。あなた仕組みましたね?」
「はて、なんのことかのぉ~」
稜姫の質問に理事長はしらを切り、テクテクとこの場から去ろうと歩み始める。
―予告―
VS理事会編 最終話
「実はのぉ~」 「それが御南茂学園の秘密」 「酷い? 何を言ってる。それが現実だ」