30 権力がなんだ! 格差がなんだ! 人間怒ると恐いぞ!
―風紀委員会 第一会議室―
室内は重苦しい雰囲気が漂っていた。
この雰囲気の原因が法廷の様な部屋作りにあるのか、
はたまた生徒会と風紀委員会が検察と弁護士のように向かい合って座っているためのなのか、
それとも、裁判長が座る席になぜか秋人が座っているせいなのか、
秋人は迷っていた。
極限の緊張下の中で。
「えーと、先輩なんで自分はここに座っているのでしょうか?」
「さっきも言っただろう、この中で一番客観的に物事を見れるのはお前だから―――」
「だから、進行役を。という話でしたよね?」
「なんだ。分かっているなら聞くな」
少し機嫌を損ねてしまったが秋人には聞く必要があった。
いや、別にこの状況の話題じゃなくてもよかったんだ。
少しでも他の事に意識を傾けたかっただけなのだから、まぁ所謂『現実逃避』というやつだ。
今までの経緯を簡潔に説明すると、
1,呼ばれて会議室に来てみると、生徒会と風紀委員会が一触即発の状況だった。
2,そんな中で平然と烈が「だったらこんなで一番客観的に見れる奴が進行役すれば』の発言で尚早揉めたが秋人が抜擢された。
ちなみに詳しい話はまだ聞いておらず、どう進行役を務めたらいいのか戸惑う秋人が今いた。
「だから生徒会に任せてくれればいいんです!」
「そういう訳には……いかない」
バチバチバチ!
と火花が散る会長と委員長、両陣は息を呑んで行末を見守ろうとするが「だったら」と秋人の一言で、
全員の視線が秋人に集まる。
オホン。
とワザと咳払いをして先の雰囲気を一蹴りし、
「生徒会と風紀委員会が協力すればいいじゃないでしょうか?」
と言葉を続けた。
……その手があったか!
全員がそんな顔をした。
(いや、気がつかなかったの!?)
秋人もまた違う意味で驚いていた。
時間は過ぎ、室内から生徒会一行は引き上げた。
なんでも詳しい事はまた後日という事で、一方的に帰っていった。
「先輩、いったい何があったんでしょうか?」
「そうですよ~ 私たち状況がイマイチ理解できないんですけど」
秋人と烈は稜姫に駆け寄り、事の詳細を問う。
稜姫はすっかり忘れていた。そんな表情を一瞬だが露わにした。
「あぁ……理事会がな」
「理事会が何か言ってきたんですか?」
「まぁな」
「どんな無理難題を押し付けられたんです?」
稜姫は烈の質問に表情を曇らせ、溜息を一回吐いてから言葉を紡ぐ。
「全部活動及び委員会の予算四割削減」
秋人と烈の表情は疑問から驚愕の表情に一瞬で塗り替えられる。
生徒会と風紀委員会が揉めていた大方の理由が分かったのだ。
これだ。
全部活動及び委員会の予算四割削減。こんな馬鹿げた話はない。
ただでさえ部も委員会も予算が足らず会計は火の車状態を如何に鎮静させるかで頭を悩ませる程の財政状況なのに、こ の上で予算が四割も削減されたら溜まったもんじゃない。
とくに風紀委員会は一番予算を多く貰っているが、足りてないのが現状。
文句を言うのは当然だ。
しかも、稜姫先輩の話によると、二・三年生は職員室を襲ったというから驚きだ。
さすがにその中に委員会に属する人はいなかったが、鎮圧のために相当苦労したらしい。
そして生徒会、きっと苦情や陳情の数が半端ないだろう。
書類地獄……考えただけでも頭が痛い、生徒会も必死に解決しようというのは分かる。
で、どちらか解決するかでもめていたという訳なんだそうだ。
どちらも頭に血が上りすぎていたんだな、ストレスとかストレスとかストレスで。
「にしても、理事会だったらこうなる事くらい予想できますよね?」
「そうなんだ。だから余計にイライラするんだろう」
「そうですよね~ なんだか小馬鹿にされている気分ですもんね~」
そこには黒いオーラを身にまとった女王様が降臨していた。
そして、目が笑っていない烈を見たのはいつぶりかな~ と秋人はまた現実逃避をした。
―予告―
VS理事会編 第二話
何だかんだで生徒会と風紀委員会は手を取り合ったのだが……