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閑話 一難去ってまた一難

『宝くじ』



ある日の帰り道、秋人と烈は話し込んでいた。


「ねぇ、宝くじってさ。どれくらいの確率で当たるんだろうね?」

「さぁ、でも一等は人類誕生の確率と一緒。とかって聞いたことあるけど」

「それって、一等を連続して当てる確率。じゃなかったけ?」


そう言って烈は足を止める。

秋人は二、三歩遅れて立ち止った烈を見る。


「どうした?」

「宝くじを買おう」


烈の視線の先を見ると宝くじの販売店があった。


「小遣い使い切ったんじゃなかったのか?」

「だ・か・ら ねぇ秋人、お願♪」


デレた。

秋人の思考はそう結論付けて打開策を模索するが、

デレ+ウルウル上目遣い攻撃をモロに受けて秋人の防壁は音を立てて崩壊した。


この時、烈の口元が笑っていたのは言うまでもないだろう。

そして秋人は烈に宝くじを買わされた後思い出した。

今財布に入っていたお金は今夜の夕飯と朝食の食材調達用の資金であった事を。






『酒乱』



ある日、烈が秋人の家に遊びに来ていた。


「にしても、ホント秋人家はジュース飲み放題ね」

「そんな事はない、一日二本までと決めているし、糖分の接種はジュース以外は極力避けているんだぞ?」

「ジュース飲むのやめたら?」

「……炭酸は人類の宝だ!」


涙目になって必死の抗議をする秋人に烈は母性本能をくすぐられたとか。


「まぁ私も炭酸は好きだけど」


烈はベッドの脇に置いてあったケースから缶を一本取り出して一口。


ヒック。


しゃっくりのような音が秋人の自室に響いた。


「どうした?」

「秋人、らい好き~」


そう声を上げて秋人に飛びかかる烈、この時秋人の脳内は混乱を極めていた。

頭上には?マークがいくつも浮かび、思考は停止寸前まで追い込まれたが、鼻にツーンと来る臭いで全ての疑問が吹き飛んだ。


「酒!?」

(あのクソ親父、嫌がらせで送ったウイルスの仕返しか!)


「なんれ、アキは私にツンツンすんの~ れつはあきだ~い好きらのに」

「あー はいはい。とりあえず離れろ、酒臭い」

「う、うわーん あきはきらいなんら~」


大声を上げて裂き叫ぶ烈はまだ酒の残る缶をそこらに放り投げて、酒缶がまだ大量に入っている箱に手を伸ばし、かたぱしから開けては放り投げてをくりかえし、秋人の部屋は酒まみれになった。


「あ~ 誰が掃除するんだよ」


呆れた秋人が雑巾でも取りに行こうかと、ドアノブに手をかけた時。


「死んれやるぅぅぅ~」


という烈の声が耳に入ったので、振り返るとどこから出したのかライターを持っていた。


「待て待て待てぇぇ! ここでそれ使っちゃダメェェェ! 火気厳禁だぞ今この部屋は!」

「やら~ あきが手に入らないんらったら……いっしょにしの? ひとつになれるから」


えへへ、と笑う烈。


(ヤンデレ!?)


秋人の思考は最早は諦めムードが漂うが、必殺の一言を思い出す。


「烈! お姉さんが迎えに来てるぞ!!」


その瞬間、烈は固まった。

ものの見事に、それはもう時間が止まってしまったんではないかと思わせるくらい。


「ふぅ~ 上手いぐわいにトラウマを思い出したか」


ホッと安堵のため息を漏らすが、それもつかの間だった。

烈の手からライターが滑り落ち、床との接触の際に火花が散った。


あっ、ヤバイ。


燃え上がったものの、天井に設置されていた器具がすぐさま火を感知して、物凄い量の水が放出されて無事鎮火した。

だが、水浸しになった部屋と焦げた壁紙の張り替え諸々で秋人は当面の仕送り額を減らされ、ジュースを買い控える羽目になった。 

しかも、水が勢い出たせいで酔った烈がパニックに陥り、秋人は暴れ狂う烈に襲われて全治二週間の怪我、それらの出来事で多大なる精神ダメージを負ってしまった。

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