26 男なら正々堂々と。 (前)
今話は烈視点です。
まったく、なんで秋人の方が私より早く…あ~ もう!
なんて私は腸が煮えかえりながら三回戦の会場に向かっていた。
会場は森林エリアの第三ブロック、木々が生い茂っている。
「遅せぇーんだよ、女ぁ!」
「うるさいな~ まだ五分前だろが、あんま五月蠅かったら灰にするわよ?」
手に炎を灯して脅してみるけど、ふぅん。と鼻で笑われてしまった。
なかなか楽しませてくれそうじゃない。
「私はもう準備できてるけど、どうする?」
「おいおい、男から殴りかかれってか?」
「それはレディーファーストって意味?」
「もちろん。俺は紳士だからな」
「笑わせないでよ!」
炎弾!
しかし男はヒラリと半身で炎弾丸を避ける。
それでも私はすかさず炎弾を追加、追加、追加、してるのに男はダンスでも踊るが如き動きで避けている。
「デカイ口叩いといてこの程度か~」
「なにお~!」
「今度は俺の番だな」
そう言って地面を一蹴りすると、秋人の様に一瞬で目の前まで来た!
「くっ」
「歯ぁ~ 喰いしばれよぉ!」
ドンッ!
鉄球でも直撃したかと思うほど重い一撃が腹に入った。
「グハッ!」
吐血。
臓器でもやられたのか、口から血が溢れだしてくる。
気のせいか意識まで…薄れて……来たような。
「もう終わりかよ」
その言葉で私は意識を繋ぎとめる!
ムカついたから!
「…るなよ、なめるなよぉ!」
炎を灯した拳を男の顔面目掛けて振りかぶった。
だけど、私の拳は空を切った。
「お~っと 危っねぇ~」
三メートル離れたところで額の汗を拭ってやがる。
なんて速さだよ。
「スゥー はぁー」
私は深呼吸をしてリラックスする。
こう言う時は冷静になれって秋人に言われたからな、案外アイツの言う事は当たるし、何よりも強いからな、だからアイツの言葉は聞き逃さないし、アイツの真似だってするさ。
私は近くにある木の枝を折る、それなりに太いヤツを。
「剣のつもりか?」
「いや、刀さ」
「どちらもそんなに変わんないだろうに」
「意味が変わる」
「そうかよ」
男はボクサーの様に拳で勝負してきた。
こいつは肉体強化系か、なんて結論に至りながら拳を木の枝で流す。
でもニ、三発目であっさりと折れた。
私の取る行動は一つ、口から火を吐いて男をけん制して私は大きく後ろに引き、
「炎帝…召弾!」
私の中で最高クラスの技を繰り出す事だ。
「なぁ!」
ボウッ!
と炎に呑み込まれた。
「死なない程度に加減してあげたから感謝しなさい!」
私は胸を張って言う、勝ったのだから勝者として当然の事だ。
ブスッ!
その音が聞こえると私は腹部に違和感を覚える。
なんで熱いんだろう?
そんな思いを抱きながら私は自分のお腹を見て驚いた。
自分の腹の光景を見て私の顔は強張る。
「まだ…しぶとい……わね」
木刀とあまり大きさが変わらない枝が刺さっていたのだ。
私はあまりの激痛に膝をつき、腹部辺りを探りながら声を殺す。
「ビビったぜぇ~ 肉体強化だけじゃ間違いなく負けてたよ」
「……まさか」
「そう、俺は二重覚醒者なんだよ」
「まだ残って…たの」
「まぁな、戦いを楽しむために今までは肉体強化だけしか使わなかったんだ」
「……」
「さて、第二ラウンド。行けるか?」
私は無言で笑いかえす。
「もちろん!」という意味を込めて。