25 いつもお偉いさんは身勝手すぎると思う。
「俺が負けるわけねぇーだろう」
そう言って烈と別れた。
うん、別れたんだよな。
あぁ、別に俺負けた訳じゃないよ?
ただね。不戦勝っていうのかな、相手が一回戦のケガが原因で辞退しちゃったんだよね。
しかも自称『運営部の者』って言うの人に「君は資質が十二分にあるから合格です。もう闘わなくていいですよ」とか言われて、それはもう嵐のように激しい二十分だったよ。
そんで今俺はなぜか……烈の虐めを受けています。
どんな状況かって?
逆吊りにされて、眼前に炎がメラメラと燃えているんですよ。
もう腹筋や背筋が筋肉痛が決定するくらい酷使してます。はい。
「もう無理…なんですけど」
「喋れるんならまだ大丈夫だな、はいガンバ!」
と鞭で背中を叩く烈さん、もう女王様だわ。
「痛い、痛いって!」
「なんで、秋人は、合格、してんのに、私だけ、まだ、合格してないんだよ!」
と不満をあらわに鞭を打ち続けている。
しかも、
「なんで中庭でやってんだよ~!」
さっきから周囲の視線が痛い、もう恥ずかしくて死んでしまいそうだよ。
しかも俺上半身裸だぜ?
それで炎で炙られて、仕舞いには鞭打ちの刑ですよ、冗談で済まされないんだよね。
これ、訴えたら俺勝訴できるよね?
訴えようかな~ でも訴えたら烈の家族敵に回す事になるんだよな……やっぱ止めとくか。
「ふぅ、ストレスも発散できたし。もう許してあげるわよ」
パチンッ。
と指パッチンをすると、炎は消えて縛っていた縄が解けた。
「ありがとう…とは言わないぞ?」
「別にいいわよ。傍から見れば完全に私が悪役だもの」
「? えらく今日は素直だな」
「なに? 秋人は"こういう私"は嫌い?」
あー 今日は"こういう"気分なんですね、分かりました。
「いや、俺は優しいお前が好きだよ」
「そう、じゃあ私はそろそろ時間だから行くわ」
「あぁ、がんばれよ」
そう言って俺は烈を見送った。