20 悪事はいつか必ずバレる。
「ストーカー こらァァァァ!」
アイツは本当に仕方のない奴だな、俺の身にもなってほしいよ。
そんな叶うはずもない願いを抱きながら俺は烈の後を追う。
「必殺、炎皇爆裂拳!」
俺が追いついた時には、ストーカーと思われる男子生徒は黒こげの状態で虫の息、相内さんは気絶していた。
一歩遅かったか、アイツの怒りの表情は人殺せるからな。
「やり過ぎだ」
と烈の頭を軽く叩く、なぜ叩くかって? そりゃー いつもこうやったら元に戻るからさ。
「痛い、何すんのよ」
「捕まえるんだぞ? 誰が虫の息にしろって言ったよ」
「捕まえたんだからいいでしょ」
「まだコイツがストーカーって決まってないのに、間違ってたらどうすんだよ?」
「そん時は秋人、いつもの通りお願いね♪」
「はぁ~」
大きな溜息をついて俺は黒こげの男子生徒の襟首を握り引きずりながら事務室へ向かい、
烈には相内さんを一応保健室へ運ばせた。
で、俺は椅子に座って男子生徒が目を覚ますのをコーヒーを飲みながら待っていたんだが、烈が戻ってくるなり男子生徒に馬乗りになって顔をボコ殴りするわ、アツアツのコーヒーを浴びせるわで一騒動あって男子生徒は目を覚ました。
「で、藤崎先輩。あなた本当に えーっと」
俺は一枚の紙に目を落として名前を確認する。
「岬 優奈さんをストーカーしてないと?」
「さっきからそう言ってんだろ!?」
「じゃあ何で一年校舎に来てたんだよ?」
烈が俺の指摘したい所をものの見事に指摘しやがった。
おいしいところ持っていきやがって。
烈の指摘に藤崎先輩の表情は歪む。
「もうね。白状しちゃった方がいいんじゃないですかね、また黒こげは嫌でしょ?」
と俺は人差し指で烈を指さす。
藤崎の先輩はビクンッと震えて視線を烈に向けると、烈は口から炎を吐いていた。
それを見るや否や藤崎先輩の顔から血の気が引いた。
先程の事を思い出したんだろう、可哀想に。
「お、俺はしてないんだ!」
「そんなに退学したくないですか、まぁそうですよね。こんな夢を描いたような学園から去りたくないですもんね」
そう、この御南茂学園の校則は女子生徒には大変素晴らしい内容が多い。
その一つが、ストーキング行為をした者は早急に退学処分とする。というものだ。
退学するという事は学園の秘密である、能力に関する全ての記憶が消去される事を意味する。
かくして、この学園に通う男子生徒とストーキング行為を働こうとする者はゼロに等しい。
「お、お前らが悪いんだからな」
「「はぁっ?」」
次の瞬間、藤崎先輩が机に手をつけると机が爆発した。
四方八方に散る残骸、俺は爆発の瞬間地震訓練の如く机に身を隠して破片の嵐をやり過ごす。
「烈! 無事か!?」
「あいつ、ぶっ殺してやる! よくも私の肌を傷つけたなー!」
あー 無事ですね。
何よりだけど、
「はぁー まためんどくさい事になったなぁ」
爆発のせいで事務室は無茶苦茶、後片付けが大変そうだ。
しかも藤崎先輩は見事エスケープときた、これはさすがの俺も頭に来るな。
「烈」
「なに?」
烈の返事に俺はめずらしく黒いオーラを放ちながら答える。
「…狩るぞ」
「オッケー」
烈は待ってました。と言わんばかりの笑みを浮かべる。
俺は五月雨の柄に付いたホコリを払い、烈と共に再び校舎に狩りに出た。
そしてこのバカ広い学園で人を探すなんて行為はあまりにも大変な事なので、風紀委員会から支給されている携帯を使う事にした。この携帯には風紀委員会全員のメアドが詰まっているため、学園中にいる数百人の風紀委員に連絡が取れる。
だから、俺は藤崎先輩の画像を付けて全員に送信。
それから約一分後、返信のメールが来た。
「……校庭、校門向かってるな。烈、追いつけるか?」
「モチ、炎の推進力をナメないでよね」
次の瞬間、烈は足の裏から炎を噴射してロケットの様に校舎の壁を突き破って校門へと向かった。
俺は烈の通った後を脚力全開で駆ける。
さて、烈は先に着いているんだろうけど、ガマン出来るかな~
一抹の不安が脳裏をよぎる。
そして案の定、烈は拳に炎を灯しながら藤崎先輩と格闘戦を繰り広げていた。
いやはや、ストーカーにしてはえらい動きが良いな。と俺は正直に感想を抱く。
「さすがは二年生って事かな」
「乙女の敵が~ 死ねー!」
「おっと」
烈の右ストレートをかわし、お返しにと右足で地面の土を烈の顔に掛ける。
「クソ」
一瞬目を瞑る。
しかし、藤崎には一瞬で事足りた。
地面に手をつくと、地面に一筋の光が烈の足元まで伸び、爆発。
「よしっ、これ」
勝利を確信していた藤崎にとっては信じられない光景が目に飛び込んできた。
「私はね。陰気で、しつこくて、卑怯ものが大嫌いなんだよ!」
紅蓮地獄!
その声が校庭に響き渡ると、地面に亀裂が走り亀裂から紅蓮の炎が吹き出し、炎が藤崎先輩を襲う。
これ、やり過ぎでしょ。
どうやって止めたもんかな~
(力を少し貸してやろうか?)
久しぶりに声が聞けたな。
(少しは成長したみたいだからな)
オレに褒められるなんて嬉しいな~
(で、どうなんだ?)
その必要はないと思う。
(何でだ?)
だって、稜姫先輩が烈目掛けて走ってるだろ?
(あぁ、なるほど。少し残念だな)
久しぶりに表に出れると思ったからか?
(正解だ。たまには外の空気が恋しくなるさ)
そっか、じゃあ今度機会があれば力を貸してもらえるかな?
(勿論、俺の為ならオレは喜んで力を貸すさ)
「秋人! 何をボケっとしていた」
「すいません。あぁなった烈を止めれた為しがない物で」
「だからと言ってボケっとするな」
烈は稜姫先輩の接近には気付かなかった。
あそこまで頭に血が上っていたら気付ける物も気付ける分けがないからな。
結局、稜姫先輩に気絶させられ、藤崎先輩は瀕死の重症で保健室へ急行、俺は稜姫先輩の説教を受け、
無事? に先生からの依頼を果たせましたとさ。めでたし、めでたし。
余談。
亀裂の入った校庭の修復を徹夜で秋人はやらされました。
それはそれは大変な作業だったそうな~
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