19 尾行ってなんかワクワクするよね。でもしつこいと犯罪。
ストーカー撃退編 第二話です。
先生からの依頼を受け、俺と烈はストーカーを捕まえる為に校内を駆けまわった。
リストに載っている連中を一人一人あたり、時には暴力的にお話し、時には拷問的にお話し、時には弱みをちらつかせながらお話したり、それはもう大変な時間を過ごしました。
まぁ、全部烈が率先してやってたんだけどね。
そんな訳で俺の出番なんてあるわけもなく、傍観者気どりで見ていました。はい!
「あー 一人もいなかった!」
「まぁまぁ、烈。コーヒーでも飲んで落ち着けよ」
俺は缶コーヒーを烈に投げ渡す。
「こんなモンいるかー!」
ボウッ!
炎に包まれた缶コーヒーはあっという間に溶解、中身は蒸発、俺の金は無駄になった。
「っておい! 俺の善意返せー!」
「善意? 笑わせるな! 今私に必要な善意はストーカーを目の前に差し出す事だァァ!」
メラメラ炎をバックにストレスを発散させる烈、気の所為か周りの視線が痛い。
「でもまぁ、引き受けたからには捕まえないといけないんだよな~」
「捕まえる? 違う、血祭りにあげる事だァァ!」
「あー もう。お前はどこぞのヘビメタのボーカールですか? 少しは落ち着け」
「だって、許せないじゃん! ストーカーのせいでこんなに楽しい学園生活をエンジョイ出来ないなんて!」
と涙目で心境を語る烈、そんな顔で俺を見るな!
俺が涙目に弱い事はお前が一番よく知っているだろうに、卑怯者め…。
「お前の気持ちはよく分かったけど、どうやってストーカーを見つけるんだよ?」
「よくぞ聞いてくれた。私も今思い出したんだけど、同じ班に相内 里奈って子いたろ?」
「あぁ、確かにいたけど。相内さんがどうしたんだよ?」
「里奈ちゃんの能力がさ、どうも他人に変身する能力みたいなんだよね」
「あー それ使ってストーカーさせて捕まえると」
「正解♪ 現行犯で捕まえれりゃ言い訳できないでしょ」
「でも相内さんの同意はどうする?」
「簡単だよ。任せておいて」
と言って教室へ向かった。
それから五分が経とうとした時、烈と相内さんがやって来た。
声をかけようとしたが、なぜか相内さんは涙をポロポロ零していたので掛けるに掛けれず、俺は烈に駆け寄り小声で、
「一体なにしたんだよ?」と問いをぶつける。
「何、少し協力してくれるように頼んだだけだよ」
「どうやって頼んだ?」
「想いを寄せる子に 以下省略」
「そんな事言ったのか!」
えへへ。と烈は笑う、そんなおぞましい事を言ってのけるお前って…。
「里奈ちゃん。よろしく」
「う、うん」
返事すると、相内さんの身体が光に包まれる。
あまりの眩しさに目を瞑る俺、光が収まるとおっとりなイメージの女の子が姿を見せる。
「どうかな?」
「うん、完璧♪ その格好で校舎ウロウロしてきてよ」
「分かった。だから」
「分かってるよ、アレはしないから」
涙を拭きながらトコトコと場を去る相内さん。
その後ろ姿はあまりのも悲しげだった。
ごめんなさい。
そう内心で土下座する。
「さて、つけるわよ」
「お、おう……っていうかこれ俺達がストーカーじゃん」
「何か言った?」
「いえ、何でも」
相内さんと距離を取って尾行する事十分、さっそく怪しい奴発見!
烈が血祭りしに行こうとするが、俺が身体を張って止め、しばらく様子を見ることになった。
しかし、怪しい奴は一向に相内さんの後を追っている。
しかも、何か危なそうな雰囲気の容姿だし、これ案外当たりなんじゃ…そう思った時、烈も同じ事を考えていたのか、
「ストーカー こらァァァァ!」
と両拳に炎を灯し、怒号を上げながら突進する。
「ちょっ、アイツしばらく様子見するって言ったのに」
その後を俺も精一杯力を出して追う。
ストーカーの命を守る為に、相内さんの精神を守る為に。
次話、ストーカーと対決!
感想などありましたら、どうぞ。