17 1+1=? "未知"ってカッコイイよね。
VS生徒会編 最終話です。
「待て!」
その言葉と共に会長は動きを止める。
そしてジロッと声の方を睨む。
「あらあら、お兄ちゃんに…二人まで」
「少しやり過ぎだ。上級生がみっともない」
「…私は、まだやれますよ?」
「私だって……まだ、虐められますよ」
稜姫先輩と烈は血塗れの姿で戦意をアピールしている。
(なんて精神力だ。俺に半分でも分けてやって貰いたいぜ)
おい、何で引っ込んだ?
(俺の気力がガス欠寸前だったからさ、俺が死んだらオレも死ぬんだ。だから引っ込んだ)
俺の精神が弱いと?
(それはお前が一番理解しているだろう?)
言ってくれるじゃないか。
(オレは俺でもあるんだ。それくらい分かる)
それにしても、酷い置き土産を残してくれたな。
(仕方ないだろう、本来ならあと四分くらいは戦えたんだ。お前が弱いばっかりに"神格化"が未完成だったんだ、ダメージが残っていて不思議はない)
あれで本来の力じゃない。って言うのか?
(そう言っているだろう、あれは"人間"より多少上位になれただけだ。"半精霊"といったところか)
"半精霊"ね。大層な名前だな。
(まぁな。本来"神"と同席の存在なんだぞオレは、なのに宿主様が情けないばかりに本領発揮できなかったって訳だ)
そりゃー 悪かったな。
(次に出て来る時にはもうちっとマシになっててくれよな? 俺」
「…分かったよ」
俺の返事は誰にも聞こえることなく消えた。
「お兄ちゃんはともかくとして、あなた達まで私の前に立つなんてね。またボコられたいの?」
「うっせー ガキが…ゴチャゴチャと」
「私はまだ本気でやっていませんから」
「ふ~ん。じゃあ第二ラウンドと行きますか?」
場に再び緊張が走り、誰かが動いたら"戦争"が始まる予感が俺を駆けた。
その時、烈の足が横に少しズレ、烈を除いた三人が前へ飛びだそうと膝を曲げると、
キーンコーンカーンコーン。
と授業開始を告げるチャイムが鳴り響いた。
その音と共に空気は一転、平穏に戻り「あ~あ、おわちゃった」と会長は残念そうにボヤく。
稜姫先輩も柄から手を放し、ハンカチを取り出して顔の血を拭う。
委員長は無言で背を向けどこかへと歩き始め、烈は緊張の糸が切れたのか膝が笑った後に尻もちをついた。
「やれやれ…また姉さんの世話になりそうだ」
先輩はそうため息交じりに言葉を零す。
―保健室―
「はい。これで完治よ」
「すいません。度々」
「いいの、いいの。これが私の仕事なんだから」
どうも先生は治癒系統の能力者で、その部類ではトップクラスなんだとか。
確かに切り傷とかすぐに直したからな、便利なもんだ。
烈は今ベッドで大人しく寝ている。
先輩は先生の悪戯が怖くて、完治すると足早に保健室を離れた。
「にしても、ようやく終わったわね」
「えっ?」
「えっ、ってまさかまだ終わってないと思ったの?」
「まぁ、何も知らないんで。まだ続いてるのかと」
「もう終わったわよ。あのチャイムが終りの合図よ、あとは話し合うのみ。暴力的な訴えはもう終わりよ」
「話し合い…ですか」
話し合いという名の暴力を行使しそうだな~ あの兄妹。
「今、何気にあの二人の事バカにしたでしょ?」
「おへっ!?」
「うふ、面白い反応ね♪」
瞳が笑ってる。
この人もSなの忘れてた!
やばい、やばい、やばい!
虐められるっ!
「さてと、稜姫ちゃんであそべなかったから。君で我慢しよかな♪」
妖艶な笑みを浮かべて顔を近づけてくる。
あー!
「ちょーーっと待ったァァ!」
烈が俺の頭を鷲掴んで自分に引き寄せ、「コイツは私の玩具だ!」と先生に啖呵を切る。
先生は「他人の玩具を奪い取るのは嫌じゃないけど、生徒から奪うのはちょっと可哀想ね」と女王様に玩具を返却した。
っていうか俺、二人に人間扱いされてなくないか?
そしてこの時を持って烈と先生の間に変な絆が生まれた事を俺は後々思いしる事になる。
「烈、俺たちも教室に戻るぞ~」
「そういや猛授業始まってたんだっけ」
「そうだよ。先生御世話様でした」
「いつでも遊びに来てね~」
その言葉に俺は苦笑いでしか答えられなかった。
烈は「また来るよ~」と無邪気な笑みで答えていたが、スキルアップしそうだな。
教室に着くと、数学の先生からお説教を喰らい、宿題二倍という地獄の様な罰を言い渡された。
俺は絶望で顔色を悪くしたが、烈は何ともないよ。と言わんばかりの顔だった。
そういや、こいつは秀才だったんだよな~ くそー!
こうして生徒会との一騒動は終わりをみた。
だが、この時すでに運命の歯車は静かに動いていた。