14 上には上がいるもんだ。
VS生徒会編 第三話です。
感想などありましたら、どうぞ。
「どうも、こんちわ。そしてさようなら」
と銃を構えた黒い長髪の少年がいつの間にか立っていた。
ヤバイ、こいつはヤバい……ッ!
俺の本能は今視界に入っている人間に対しては全身全霊を持ち、一瞬の油断もしてはならないと警鐘を鳴らす。
黒髪の少年は引き金を何の躊躇もなく引いた。
が、銃口の中には銃弾は装填されていなかった。
代わりに。
ドーンッ。
銃声はしたが、銃弾は射出しなかった。
しかい、確かに俺の腹からは血がにじみ出ていた。
グハッ。
止め無く溢れる血、あっという間に血の水たまりができてしまった。
「なっ、秋人!」
烈が駆け寄ってくる。
今まで見せたこともない表情で、なんで涙なんか流してるんだろうか、その疑問を最後に俺は意識を手放した。
―保健室―
目を覚ますと消毒液の匂い、そして真っ白の天井。
一瞬でここがどこだか分った。
保健室だ。
「あら、目が覚めたの?」
上体を起こして、声の主を視界に入れる。
彼女は二十代前半だろうか、かなり若い。
それに白衣なのに何故か黒タイツにミニスカ……。
「保険の先生…ですか?」
「そうよ。一年校舎保健室勤務の先生、七瀬 香織って言うの、よろしくね」
「よろしくお願いします…あと、もう一人いませんでしたか?」
俺は聞きたかった。
俺はやられてしまったけど、烈は無事だったのかどうかを。
「大丈夫よ、烈ちゃんなら今頃稜姫ちゃんからキツ-イお話を受けてる頃だろうから」
「そう、ですか」
「にしても君も災難ね~ 一年なのに副会長にやられて」
「えっ? 副会長って奈々さんなんじゃ」
「御南茂学園の生徒会には副会長が二人いるのよ。男女一人ずつね」
「なるほど」
「君が遭ったのは黒井 蒼君。生徒会の№2よ」
「№2、奈々副会長よりも強いんですか…」
「そう、才能の塊ね。でも会長ちゃんには手も足も出なかったけど」
と、少し艶美な笑みを見せる。
「失礼する」
そう言って稜姫先輩と烈がやって来た。
「なんだ。もう目が覚めたのか」
稜姫先輩はいつも通り凛としているんだけど、烈はどうしたんだろうか?
酷くテーションが低い、まるでこの世の終わりでも見たかの様な、そんな顔だ。
「それにしても、稜姫ちゃん。新人を置いてきぼりなんて、少し酷いんじゃないの?」
「うっ……それは、しかしあの状況では」
「はいはい。言い訳なら幾らでも言えるわよね~」
「ううっ……」
稜姫先輩が押されてる!?
しかも初めて見たよ、涙。
なんか…可愛い。
そして七瀬先生は親指で俺を指し、「謝りなさい」と稜姫先輩に告げる。
稜姫先輩は最初こそ躊躇って一歩を踏み出さなかったが、「早く」という先生の催促を受けてベッドの横まで来た。
「悪かった」
きっとそれが先輩の精一杯だったんだ。
俺は恐れ多いので、「いえいえいえ」とビビりながら言う。
しかし、ここで「そんなんじゃないでしょ?」と先生は先輩にやり直しを求める。いや、命令した。という方が正しいだろう。「ご、ご…ごめんなさ」涙目で言われたそれは普段とのギャップも相俟って、核兵器級の破壊力だった。
きっと、これで落ちない男はこの世に存在しないだろう。
そう確信を持てる。
「……姉さん! 私はやはり貴女が嫌いだ!」
……姉さん? 誰それ。
「あら、稜姫ちゃん。お姉ちゃん傷ついちゃうな~」
「あのー もしかしてお二人は姉妹で?」
「そうよ♪」
「でも、苗字が…」
俺の質問に先生は左手を俺に見せる。
左手のに輝く指輪、しかもデカイダイヤモンドが眩しい。
「あぁ、結婚されてたんですか」
苗字が違う訳だ。
そりゃー こんな美人なんだから男が放っておく訳ないか。
納得だわ。
「オホン」
先輩は一回咳払いをして
「さて、秋人。怪我も治った事だし、続きをやるぞ!」
「続きて、何の続きをですか?」
「何を言っている。予算争奪戦だ」
「初耳なんですけど」
「そうだったか?」
その後、俺は予算争奪戦とやらの説明を稜姫先輩から受けた。
委員会、部活が生徒会に申請した予算が却下などされた時に、不服と思ったら生徒会相手に即戦闘が起きるんだそうで、(ちなみに戦闘=嘆願だそうです)特にこの時季が一番激しいらしい。
しかもだ。四年前は四人も重傷者が出て今も病院の御世話になるほど激しい展開になる事もあるそうな。
「何もかも初耳なんですけど先輩」
「あー すまん。そう言えば詳しくは話していなかったな」
「でもまぁ、予算が通らないってのは大変な事だし、俺は別に協力しますけど…烈に何があったんですか?」
「あぁ、少し説教をな。心配する事はない」
パチン。
と指で鳴らすと、「あれ、私何やってたんだっけ?」と烈が覚醒した。
「何したんですか?」
「だから説教だ。少し特殊だが」
こえぇー!
この人『真正の女王』を上回ったよ!?
まさか女神か、女神様なのか!
……その女神様を涙目にさせた先生って、人?
「秋人、烈、今から生徒会準備室に殴りこみに行くぞ。標的は書記の春原 楓だ」
「は、はい」
「オッケー♪」
こうして、俺はやられたばかりなのに前線復帰することになった。