12 他人の喧嘩は放っておいた方がいい。
今話から、VS生徒会編です。
―風紀委員幹部専用会議室―
「お。やっときたか、稜姫早く座れ」
「はい」
珍しく委員長が喋ってる!?
そんなに大変な事が起きてるのか?
それになんで委員長しか座ってないんだろう。
「委員長、他のメンバーは?」
「皆出払っている。事は一刻を争うからな」
「一体何があったんですか」
俺も席に着く。
すると烈が耳元で「私はどうすればいいんだ?」と珍しく空気を読んで小声で聞いてくる、
俺は「立ってるしかないだろう」と答えを返したら、烈の額に青筋が浮かぶのが見えた。
どうやら俺の返事は烈を怒らせる物だったようだ。
だが、場の空気を読んでいる烈は怒りを忘却の彼方へと追いやったのか、溜息一つ吐いて耳元から離れた。
「それが、あの、妹が」
委員長の声は怒りで震えていた。
俺はゴクリと唾を飲み込む。
「風紀委員会の予算を全面凍結するって言いだしたんだ!」
「! まさか…」
稜姫先輩は驚愕の表情を浮かべる。
「今年度の予算はつい先週申請したばかりですよ? まだ予算会議も行われていないのに」
「そうなんだよ。どうも先日の喧嘩が気に食わなかったらしくてね」
「しかし、本当に予算が下りなかったら風紀委員会始まって以来の危機ですよ」
「そうなんだ。だから他の者たちには回避すべく生徒会メンバーに奇襲をかけるように命令したところだ」
「では、やるのですか? アレを」
「まぁ、そうなる」
稜姫先輩と委員長は重苦しい表情で話している。
ここで事情を理解していないと後で苦労するのは目に見えているな、聞くか。
「あのー 話が見えてこないんですが」
「そう言えば、君にはまだ説明してなかったね。悪いが稜姫、後は頼む。やることがあるんでな」
「分かりました」
委員長は稜姫先輩に頼んで退室した。
「では、詳しく話そう。
風紀委員会は校内の警察機関みたいなものだ。故に経費という物が掛る。それに各人に少ないが給料も渡しているんだ。
給料目当てで入っている奴もいるしな。それに設備を維持するのにも金は掛かる。風紀委員会は金で機能していると言っても間違いじゃないんだ」
「ということは、その金がなくなったら委員会は空中分解。ってとこですか」
「まぁ、そうだな」
「じゃあ……」
「そうだ。今は空中分解の真っただ中にいる。それを防ぐには会長に折れて貰うしかない」
「だから生徒会のメンバーを奇襲してるんですか」
「分かったなら我々も行くぞ」
「行くって、どこにですか?」
「勿論奇襲をしにだ」
なんでそんな冷静な顔でそんな大胆な事言えるんですか!?
奇襲って、完全に俺ら悪者ですよ? 悪ですよ? 校内の風紀を守る立場にいるのに。
「先輩、全力で行きましょう♪」
「おう」
あぁ、なんか最強タッグが出来あがっちゃってるんだけど。
これ、死人出るんじゃないの?
「何してんの、秋人も行くわよ」
「あ、あぁ……不安だな~」
―渡り廊下―
「二年校舎に行くんですか?」
「当たり前だ。三年校舎にはすでに八人散っている」
「って事は二年校舎には私らも含めて五人ですか」
「ちょっと待てよ。風紀委員会ってもっと人数居ましたよね?」
「あぁ、いる事に入るが。生徒会役委員とは雲泥の実力差があるから今回は引っ込んでいるだろう」
新入りの俺達が出しゃばっていいのだろうか?
あとで何かされそうで怖い、特に俺。
そんなお先真っ暗な俺の前に巫女装束の女子生徒が一人、奈々副会長だった。
いきなりババ来たー!
引きたくなかったのに~
「あら、稜姫ちゃんに…」
奈々副会長が話しているというに稜姫先輩は容赦なく斬りかかる。
「いきなり…ですか、容赦ないですね~」
奈々副会長は短剣で先輩の一太刀を受けとめる。
なんて反応スピード、これがこの学園を統べる生徒会副会長の実力か。
感心している俺の横を何か通り過ぎる。
「私もいるのよー!」
「おい、烈!?」
烈は両手に炎の塊を浮かせて、奈々副会長に攻撃を仕掛けようとジャンプ。
しかし奈々副会長の陰から何か出てきて、烈を弾き飛ばす。
「誰!」
烈は声を上げる。
よく見ると奈々副会長の隣に男子生徒が一人立っていた。
「生徒会 副会長補佐、藤堂 秀司」
俺とあまり背丈が変わらない、茶髪の二年生はそう名乗った。
それにしてもかなりテーションが低いな、本当にやる気があるのか疑ってしまったぞ。
「おい、烈。いきなり襲いかかるなんて」
「何言ってんだよ、奇襲の意味ないじゃん」
「だがな、常識というものがだな」
「稜姫先輩が一番よ?」
「うっ、先輩!」
「お前らはそいつの相手をしろ!」
そう言って三階に架かっている渡り廊下から稜姫先輩と奈々副会長は飛び降りる。
「さて、我々だけになりましたね。私はあなた方と戦闘する意思はありませんが、どうでしょうか?」
「俺は……」
「もちろん! 私達はやる気満々よ!」
と問答無用で前へ出た。
今度は口から炎を吐いてけん制する。
「そうですか、非常に残念です。では、私も本気で参ります」
そう言って両手を広げると、左右から水が彼の両手の上で球体上に集まっていく。
「私と似たもんか?」
「いえ、私は水を発生させるなんて高度な事はできません」
「じゃあ、どうやって……そうかここは中庭に跨る渡り廊下! 中庭には噴水が」
「その通りですよ。彼女に比べて貴方は冷静で物わかりが良さそうですね」
褒めてくれれるのはありがたいが、俺は生憎ただ臆病者なんだけど。
それに烈をバカにしたら、
「私が…バカだって言いたいのかァァァ!」
怒号を上げて烈は燃え上がる。
そう、文字通り全身に炎を纏って、見ているこっちは火達磨になった人間にしか見えない。
「水、掛けた方がいいかな」
俺は本心を零す。
「やれやれ、女性に手を上げるのは私のポリシーに反するのですが、身にかかる火の粉は払わなければね?」
プッチン。
そう俺には聞こえた気がする。
「私が、火の粉? 火の粉って。ふざけんなよォォォ!」
炎を身に纏う烈から竜巻の様な炎が二本彼に迫る。が、彼の前に瞬時に水の壁が出来上がり炎は鎮火した。
「炎では水に勝てませんよ?」
「ふふふふ、あははははは! 面白い、面白いわ! 蒸発させたげるわよ!」
キレやがった。
「 『炎帝召弾』! 」
なっ! これってあの不良達に放った奴の倍近くあるじゃねぇーか!
「ふん、水神壁玉」
水が円形状に変化して烈の技を迎え撃つ、途端に水蒸気が辺りを包み込み、視界に影響を与えた。
クソっ、これじゃ見えない。
「燃えろォォォ!」
烈か?
炎が渦を巻いて火柱が立つ、その勢いで水蒸気は吹き飛び火柱の中に烈がいることを確認できた。
こんな狭いとこで火柱なんか立てやがって、離れてる俺のとこまで熱気が来てるよ。
「全く。これでは校舎に甚大な被害が出てしまいますね。仕方ない、決めますよ」
彼は愚痴を零しながら烈に向けて駆ける。
「『絶対零度』」
それは一瞬だった。
火柱が凍った。
中にいる烈は無反応、死んではいないと思うが。
「さて、残るは貴方だけですが、どうしますか?」
「そりゃー 俺は戦うのはゴメンだね」
「そうですか、では私はこれでし…」
「だけど」
俺は言葉を遮って、睨みつけながら言う。
「幼馴染にこんな事されて、ただじゃ帰さねぇーよ」
「貴方は簡単には帰させてくれそうにありませんね」
「北条 秋人、推して参る……っ!」
抜刀、しかし刹那信じられない事が起こった。
「ここですよ?」
声が、後ろからしたのだ。
振り返るとすでに水を剣の形で固定して振り下ろしている時だった。
袈裟に斬られた。
服は破れ、血は流れ、俺は淵に立った。
「信じられませんか?」
「いや、疑う余地はない。俺は斬られたんだから」
「良い心掛けです。しかし対処法を考えないといけませんよ?」
「考えるけど、その前にアンタをぶん殴る!」
俺は全身の力を抜いて、改めて五月雨を構える。
集中…感覚を研ぎ澄ませ、俺!
「参る!」
限られた空間だが、俺は脚力を出し惜しみなしで使って、瞬時に背後に回り込む。
決める。
刃を振り落とす、が刃はコンクリートに当たった。
移動も速いな、これが生徒会の実力か。
パキッ、パキッ。
その音に俺も彼も、戦闘中だというのに一点に視線をやる。
視線の先は凍った火柱だ。
「まさか、私の氷が溶かされるとは」
凍った火柱は四方八方に砕け散り、氷は溶け水に変わって数秒間渡り廊下のみに雨が降った。
「私抜きで楽しい事してるじゃない、秋人」
烈が再びリングに上がった瞬間だった。
VS生徒会編 第一話。どうでしたか?
感想などありましたら、どうぞ。