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10 やっぱ必殺技とかっているよね。

翌朝、俺の目を覚ましたのは窓から差し込んできた朝陽でも、癒される小鳥たちの鳴き声でもなく、幼馴染の鉄拳だった。


「いたいな~ 何すんだよ」

「朝だぞ!?」

「だからどうしたんだよ」


と何時か確認しようと時計を見てみると、なぜか長針も短針も12を指していた。


「朝じゃなくて昼じゃないかー!」

「だから早く起きろって言ったんだよ! どうすんだよ私達遅刻だぞ」

「いや、もう遅刻って話じゃないだろ。サボちゃったって方が正しいなこの時間帯だと」


どうしたものかと俺と烈は腕を組んで考える。

だがしかし寝起きの俺に妙案が浮かぶとも思えず、あとは烈頼みだ。


「そうだ!」


烈が何か閃いたのか声を上げる。

俺はどんな事を思いついたのか胸躍らせる。


「何かいい案でもあるのか?」

「このまま病欠という事にしておこう。大丈夫、私達はなりたての風紀委員だ。身体を壊したとか言っておけば誤魔化せる」

「まぁ、それもそうだし。サボるか」


そう、実を言うと俺はそんなに真面目じゃない。

中学の時も時々サボる事はあったんだ。

それに烈の提案は俺的に言うと百点満点だ。


そんなサボる方向性で自分の意思を調整していると、戸が開いた。


「誰ですか? まだ授業中でっ……稜姫いつき先輩」

「何をしているんだ?」

「いや、その。荷物の整理を」

「烈! 貴様にも聞いているんだぞ?」

「わ、私は相棒の手伝いを」


稜姫先輩は鋭い眼差しで俺たちを見ている。

疑っている。疑われてる!


「まぁいいだろう、それより不幸の風と一戦交えたそうだな」

「あー 昨日の」

「そうだ。昨日の事を聞いているんだ」

「私は途中からだから詳しくは分かんないけど、秋人なら」


くっ、俺一人に押し付ける気か!?


「秋人、詳しく話せ」

「……喧嘩売られました」

「……なるほど。勝ちたいか?」

「そりゃ、まー」


先輩は俺が負けたことをお見通しだった。

いや、きっと俺なんかが勝てるはずがないと確信していたんだな。


「ウジウジせず、きっぱりと決めんか!」

「は、はい。勝ちたいです!」

「よし、烈には少し教えたと思うがお前にも教えよう」

「何をですか?」

「必殺技みたいなもんよ。ねっ先輩?」

「あぁ、そんなものだ」


着いて来い。と先輩は手招きをして事務室を後にする。



―森林エリア―


「結構歩いたんですけど、まだ着かないんですか?」

「もう着いた」


少し進むと開けた場所に出た。

軽くサッカーコート二面はありそうな広さだ。


「それにしても烈、いつの間にここで特訓したんだよ?」

「私はここに来るのは始めて、この前は能力を使うコツを教えて貰っただけ」

「コツ?」

「そうだ。能力を思い通りに使いたいなら”イメージ”が重要だ。それ一つで質が変わる」

「イメージ。ですか」

「そうだ。烈、やってみろ」

「は~い」


烈は返事をすると、右手を前へかざし


「炎弾!」


と声を上げると、手の平から炎の弾丸が前方に射出された。


「うぁー なんか羨ましい…」

「凄いでしょ~? 私は神経強化系だからね」

「烈と違ってお前は肉体強化系だろうから、イメージといっても技の動作をイメージしろよ」

「はい」


烈は炎を操れるのがよっぽど嬉しいのか、満点の笑み火の玉でお手玉していた。

この時ばかりは、やっぱり女の子何だよな~ と思わずにはいられなかった俺である。


しかし困った。

技の動作のイメージと言っても俺は今まで剣道というものを全くやった事がないし、子供の頃はあまりアニメをみていないので、想像という観点では自力でイメージを作り上げるのは不可能だ。


そんな困り果てた俺に見兼ねた稜姫先輩は、


「私の流派でよければ手本を見せようか?」


と、手を差し伸べてくれた。

もちろん俺の答えは


「お願いします!」


「私の流派は華天流かてんりゅうといってな、私はその中では『演武』(えんぶ)という派閥に入っている。まぁ細かい事は置いておいて、私が適当にうつからうけてみろ」

「分かりました」


先輩は柄に手を伸ばし、構える。

すると、辺りの空気は緊張を高め冷や汗が出てきた。


「華天流演武 一つ目『蓮華』!」


抜刀と同時に俺に向かって駆けてくる! 

しかも突きですか!

どう避ければいいんだよ!?


先輩の突きは早すぎて刀身が分裂して見える。

そんな神速ともいえる突きを俺が完全に凌げるわけもなく、制服はどんどんリサイクルへの道を進んでいる。


「ちょ、先輩! もういいですって、このままじゃ俺死んじゃいますって!」

「そうか?」


きょとん、した顔で先輩は嵐の様な突きを止めた。

この人も加減ってものが分からん部類なのか?


「しかしこの程度とは情けない、これではせっかく用意した実戦もできそうにないな」


と視線の方を見てみると、いかにも不良という格好をした生徒が四人立っていた。


「もしかし俺たちをあの人たちと戦わせるつもりだったんですか?」

「よく分かったな。その通りだ」


良かった~ 

ホント良かった~


「心配無いですよ。秋人は本番に強いですから」

「そうか、なら本番といってみるか」


烈ゥゥ~!

なんて事言ってくれんだよ!


って、おい。まさかお前ワザとか!


烈は笑っていた。

黒く。


「秋人、楽しみましょう♪」

「……こいつ、本当に悪魔だな」

「秋人、お前はまず見ていろ。烈との差を見て貰う」

「烈との差、ですか?」

「あぁ。あの子は意外と優秀だからな」

「優秀。ね」


烈は不良二人と対峙する。


「アンタ達も運が悪いわねぇ~ 私と相手をさせられるなんて」

「ふん、ガキ一人負かすくらいで見逃してもらえるってんだからチョロイもんだろ?」

「そうだぜ。それに後でお前を可愛がってやるよ。なかなかの上玉だからな」


台詞までホント不良だな。

少しベタすぎる気もするけど。


「勝てるんならねッ!」


烈は炎を無差別に周囲に放つ。


「おっと」

「可愛い顔してやることは大胆だねぇ~」


「さてと、次は秋人が待ってるんでね。もう終わらすわよ」


烈は空中に跳んで避けた二人に向かって終了を宣言した。

まだ滞空時間の為、身動きが制限されている二人は少し警戒を強め、胸の前で腕をクロスして身構える。


「そんな生身で防げるわけないでしょ」


烈は両手を横に命一杯広げ炎の塊を両手に創り出した。


「『炎帝召弾』(えんていしょうだん)ッ!」


言葉と共に両手を前に向けると、この世の法則なんて無視した巨大な炎が不良二人に向けて放たれた。


そして俺は前言を修正せねばなるまい。

終了宣言ではなかった、死刑宣言だったのだ。


不良二名はというと、真黒に焦げながらも烈の加減のお陰で一命はとり遂げることができた。

しかし烈はあの不良ニ名にとってはトラウマ確定だな、もしかしたら転校するかもな。


「これが私の実力よ」


と烈は胸を張って言う、確かにこれは俺も一言もケチをつける事が出来ない。


「あきれるほどに凄いな」

「何をボサッとしてる? 次はお前の番だぞ」


あっ、すっかり忘れてた。

俺も戦うんだったっけ、どうしよう。

読んで頂いてありがとうございます。

この修行?が終わったらチョメチョメ編的なものを始めたいと思います。

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