01 入学したらそこは何でもありでした。
四月、全国的に入学シーズンを迎える時季だ。
それは俺も例外ではなく、
自宅から一番近い高校へと進学した。
私立御南茂学園。
在籍生徒1000人と1人、ここいらじゃ一番デカイ学校だ。
「あ~ 入学式無駄に長かったなー」
「そんな事言うなよ、アンタは真面目って人間に必要不可欠な要素が欠落しちゃってるんだから、そう感じても仕方ないでしょ」
「何、それ! 今何気に人間否定したよね!俺という人間を否定したよね!」
「今さら何言ってんの、私達の付き合いは長いでしょ?」
「長くても言葉の暴力は続けちゃダメでしょ!」
「ったく、秋人は見かけマジ不良なのに、心はガラスのハートだよな~」
こんなやり取りをしている相手は、岩裂 烈
俺の幼馴染、容姿は世間一般的に言うと「美少女」、でも中身は「ドS」という複雑怪奇な構造で、中学時代のあだ名は「真正の女王様」だった。
ちなみに、俺に真面目という要素が欠落しているという烈の言葉は半分的を射抜いているが、完全なる不真面目とい事ではない事実を強調しておきたい。
そして入学式を終えた俺らは教室へ向かう。
俺らが振り分けられたクラスは一年F組、ってか一年何百人入学したんだよ。
俺の席は窓側の一番後ろという好ポディション、なのに、
なのに何で隣が女王様ー!
「よう、秋人」
と満面のドS笑みでVサイン。
なに、その勝ち誇った顔。なにかいい事でもありましたか~?
「よ、よう」
そしてようやく担任の登場、
教室のドアがガラガラと音を立て開くと、
タバコに火を付けた中年の顎髭が入って来た。
教師が喫煙、何この学校! 本当に進学校かよ!
っていうか教師が生徒の前で喫煙ってダメだろォォ!
「は~い。担任の荻久保で~す。とりあえず…」
そう言ってダル~イ口調の荻久保はチョークを手に持ち、黒板に字を書き始める。
自、
習、
……自習ゥゥゥ!? 自己紹介とかじゃないのォォ!
おかしいでしょ!
「先生!」
と烈が怒を込めた声を上げて立ち上がる。
「なんだ~ えーっと。前田?」
「違います、岩裂です」
「あー 岩崎」
「字が違います。爆裂の裂で、岩裂です」
「はいはい。岩裂、なんだ~?」
「なんで自習なんですか!?
普通、自己紹介とかなんじゃないんですか!」
そうだよ。さすが烈、秀才と称えられるだけの事はあるな!
と俺が思っていると、
「俺の基本方針は放任主義だから、自習でいいんだよ」
と荻久保先生は返答する。
まさかこんな答えに烈が納得するわけ、
「なるほど!」
納得したァァー! しかも即答ですかっ!
納得。という表情を浮かべて烈は席に座る。
そういえば、こいつって勉強はできるけど違う意味でバカなんだよな。
荻久保先生は教室を出て行くとチャイムが鳴る。
おそらく休み時間を告げるチャイムだ。
で、俺は校内見学も兼ねて売店へと足を伸ばす。
しかしそこはすでに戦場と化していた。
在籍する学生の半数が売店で昼食を購入すると噂で聞いていたが、これは。
その光景は目を背けたくなる。
なんたって、女子も男子も揉みくちゃになりながら昼食を買っているのだから、
男子が平気で女子の胸に手を当てたり、女子は女子で男子の股間を踏みつけて前に進んでるし、ここは無法地帯なのか。
「おい、突っ立てるんならどけよ」
「あっ、すませっ」
俺は目を見開く、目の前でタバコをむしゃむしゃと食べている人類がいる。
あれー? タバコって食べ物だっけ? タバコって未成年が買えたっけ?
あれ?
「早くどけよ」
少し苛立った口調で謎の人類は俺に催促するので、
俺は無言で謎の人類の進路から移動する。
「なんだよ。この学校は、常識あるやつはいないのかァァ!」
「あらあら、うるさい子羊ですね」
後ろを振り返ると、とても綺麗な女性が立っていた。
けど、服装を注視してみると、神社なんかで見かけることができる巫女装束を着ている。
「巫女さん?」
「はい、迷える子羊を導く者です」
「それはシスターさっ」
俺の言葉は途中で遮られた、だって巫女さんが俺の喉元にキラキラ輝くナイフを突き付けているんだもの。
「おやおや、子羊はおしゃべりが好きなんですね~
いけませんよ? 口は災いの元といいますでしょ?」
確かに言いますけど、俺の言おうとした事は間違いなく正しい事だと思うんですけど、っていうか神職の人が人にナイフ突き付けるってどうよ?
その時だった、巫女さんは右に視線をやって俺の目の前から姿を消した。
というか、上にジャンプした。
刹那、俺の眼前を一閃、なにかがきらめいた。
「ふぅ、キミ危なかったな」
そう言った凛とした顔立ちの少女。
彼女を見て俺は言葉を失う、確かにあの巫女さんはヤバかったけど、貴女も十分危険物を手にお持ちじゃありませんか!
そう、この人の手には立派な太刀があった。
刀身は美しい光を放っていて、よく手入れの行き届いた一品だ。
見ていて惚れぼれする、見ているだけなら。
「あのー この学園ってまともな人っているんですか?」
「そうだな、きっと少数派だな。異常って呼ばれる部類が多数派だと思う」
「そうでうよねー で貴女はどちら側で?」
「私? もちろん少数派だ」
「ははっ、そうですか。では失礼します」
そう言って教室に戻ろうと背を向けた俺に彼女は声をかける。
「ちょっとついて来い」
「えっ? ちょ、まっ」
彼女は俺の言葉を聞く事なく、俺の手を握りどこかへと誘拐した。
そして引きずられて着いたのは部室棟だった。
しかも部活名が書かれているプレートには「鍛冶屋」と書かれていた。
学校に鍛冶屋? すっごい学校だね。そう思った。
「これ、お前にやるよ」
「これって」
「刀だ。名は「五月雨」という」
「かっこいい名前ですね。でも俺には必要ないですよ」
「私からの贈り物が要らぬと言うのか?」
と優しい口調で言っているのだけど、
なんで喉元に刃が突き付けられているんだろう?
うわぁー この学校って本当に異常だよ。
こうして俺は成り行きで彼女から五月雨を受け取り、波乱の学園生活が始まった。
どうも、月冴です。
文法にすこし不安があるのですが、書いてみました。
感想など頂けると嬉しいです。