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子はかすがいって言うやろ?




 晩御飯はよく煮込まれた牛タンシチューである。


 その事からも南川は俺がここへ来る前からこの計画は練り込まれていた事が分かる。


 確かに牛タンシチューは美味しいのだが、逆にこの牛タンシチューが美味しければ惜しいほどに俺の恐怖が跳ね上がっていく。


 確かに、俺は彩音の事を諦めてこれからは南川の為にと思ったのだが、南川の常軌を逸した行動が分かるとやはり怖いものがあるのも事実である。


 怖いものは怖いのだから仕方ないとは言い切れない怖さがそこにはあった。


 それこそ、選択肢を一つでも間違えると死に直結するような、そんな怖さである。


 だと言うのに俺は南川を見ると心臓の鼓動が速くなり、俺が南川を意識し始めているのが嫌でも分かってしまう。


 彩音ですら一緒にいてもこれ程心臓の鼓動は速くならなかっただろう。


 これが本当の恋か、とも思うのだが、それでも俺は南川に一つどうにかしてほしい問題があった為流石に聞いてみることにする。


「なぁ、南川」

「何や? ケイくん。 あ、ケイくん呼びは嫌やったか? それなら別の呼び方にした方がええやろか? そ、それこそダ、ダーリン……とか。 なんならウチの事も恥ずかしがらずに『ハニー』って呼んでくれてもええんやで? きゃっ。 恥ずかしいわぁっ。 ウチに何を言わせとんねん」

「いや、そうではなくて……俺の足につけている鎖なんだが……外して──」

「そう、ウチも足の鎖の事で悩んどってん。 だって、足の鎖を外したら逃げてまうやろ? でも休日明けたら学校あるやん? せやからどしよう思っててん」

 

 なんだろう? 会話が噛み合っていない気がする。

 

 キャッチボールで軟球を山成になげたらソフトボールが豪速球で返ってくるような、そんな違和感を感じてしまう。


「み、南川は俺の事が信用できないのか?」

「ち、違うねん。 そやない……多分これはケイくんを信用していないんじゃなくてウチがウチ自身に自信がないんやと思う。 どうせウチみたいな人間は周りから人がいなくなるんやろなって……どうしても思ってしまうねん」

「そんな事はないっ!! 南川は魅力的だっ!! そして他の人が南川から離れて行こうとも俺だけは南川の側に居続けると約束するっ!! その証明をする為にもこの足の鎖を外してほしいっ!!」

「そ、そこまで言われたら仕方ないなぁ。 じゃぁ子作りしよっか? この三日間で的中させてな?」

「……はい?」


 ちょっと南川が言っている意味が分からない。


「子はかすがいって言うやろ? 縁の切れ目は子で繋ぐって言うしな、最悪縁が切れても養育費で繋がってられるし、血の繋がった子がいるというのを想像するだけで生きてけるねん。 まさに見えない鎖やな」

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[一言] 緑の悪魔を思い出しました。
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