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女と女の戦いは始まっている


「ねぇ、何かお姉ちゃんと犬飼さん少し緊張してない? そりゃ私が晩御飯のおかずを、ふきの仕込みをする流れで裕也と一緒に二人で作ったんだけどさ、いくら私が作ったからといっても裕也も一緒に作ったんだからそんな変な物は作ってないからっ。 いつもは確かに? 私の天才的かつ独創的なアイディアと閃きによって食材たちが私について来れてない感じはするんだけど、それは私の技術と能力に追いつけていない食材たちが悪いのであって私のせいじゃないし、何より今日は裕也と一緒に作ったからさすがの私も裕也の実力に合わせないといけないからいつもの半分の力しか出していない分、食材たちも何とか私について来れたと言うか、裕也と一緒に二人で作った料理だから美味しいに決まってるし? 何故ならば裕也と一緒に作ったからねっ! 因みにふきの仕込みも裕也と一緒に仕込んじゃったりしたから、特にふきの味は格別に違いないと言うか──」


 先ほどから妹が私と犬飼さんへ牽制のつもりなのだろう、しきりに『裕也さんと二人で料理を作った』という事をアピールして来る。


 以前の私であったのならばかなり腹が立っていただろうが、今はそれどころでは無い。


 むしろ未だに二人で何かした事でマウントを取ってくる事を見るに、莉音はまだその程度(・・・・)の関係なのだという事が分かった為、むしろ私は安心してしまう。


 もし莉音までも裕也さんに告白したのであればあんなマウントなんか取れる訳が無い。


 二人っきり(茂さんがいるので厳密には三人なのだが)でいて何の進展もしていない、そして二人っきりでいて告白する勇気よりも羞恥心の方が勝るレベルなのだという事も分かってしまう。


 その点で言うと莉音よりも私の方が裕也さんへの想いは上だという事も分かってしまうので、莉音は放っておいても良いだろうと判断する。


 そして、本当の敵は莉音ではなく犬飼さんだろう。

 

 先ほどから明らかに犬飼さんの裕也さんに対する反応がぎくしゃくしているのである。


 そう、それは今の私と同じ(・・・・・・)ように。

 

 絶対、犬飼さんも裕也さんに何かアクションを取っているに違いない。


 いったいどんなアクションを取ったのか物凄い気になるのだが、その事を気にしているのを犬飼さんにバレないように必死に気にしてない体で過ごす。


 恐らく、既に女と女の戦いは始まっているのだ。 少しでも敵である犬飼さんに情報を渡さないようにしなければ。


 そんな事を考えながらこれからの作戦を練っていると、今日取った山菜尽くしの晩御飯が運ばれて来るので、とりあえず写真を撮って翔子に送る。

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