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俺が先に好きになったのに


 そこに写っている彩音の表情はとても幸せそうで、そしてその写真からは彩音が西條の事が好きなんだということが伝わってくる。


 いや、今までの行動から見てもいつからかは分からないのだが彩音は西條の事を好きなのだという事が分かるような行動を幾度もしていたではないか。


 今回このような事になってしまったきっかけを作ってしまった彩音との手紙のやり取りも、客観的に見ればどう考えても彩音は西條にベタ惚れであると一目で分かってしまう内容だったではないか。


 何が洗脳だ。

 

 何が助けを求めているだ。


 本当に助けを求めているのならばあの様な、俺にすら見せた事のない恋する乙女のような表情をするわけがない上に、俺が想像しているような最低な事を西條がしているのだとしたら、あの彩音が妹である莉音をこの旅行に連れて行く訳がない。


 彩音の事である。 何がなんでも妹だけは助けようとするはずだ。


 それをしていないという事は、そういう最低な行為はされていないという事でもあろう。


 更に言うと、隠し撮りをしたりするという事は彩音が西條に惚れている事がまだ西條には知られておらず、そしてまだ抱かれてすらいない可能性だって出てきた。


 もしそうでないのならば隠し撮りなんかせず堂々と撮っているだろう。


 一体、俺は今まで何を見て、何をして来たのか。


 全てが無駄で、そして全てにおいて遅すぎた。


 もっと早くこの思いを彩音に伝えていれば、もしかしたら何かが変わっていたのかもしれない。


 俺はこの関係がずっと続くと思っていたし、近い未来俺は彩音と結婚をするものだと根拠のない自信からそう思って疑いもしなかった。


 だから俺はこの恵まれた環境に胡座をかき、何も行動に移さなかったという体たらく。


 それに、少し調べれば北条の家の状況だって分かったはずだ。


 なんの事はない。


 俺が先に好きになったのに、何もしてこなかったツケが回ってきただけであり、遅かれ早かれ誰かに奪われていただろうと今になってそう思えるのと共に、全ては自分のせいであるにも関わらずそれら全てを西條のせいにして、今まで何もしてこなかった自分は見て見ぬふりをして目の前の現実から逃げて来たのだと思い知らされる。


 それも、南川にこんな事をされて自分の保身なんかよりも今現在自分に降りかかっている身の危険をどうにかしなければと思えたからこそ客観的に彩音の事について考える事ができたのだろう。


「ははっ、めっちゃダセェ……」


 恋は盲目とはよく言ったものだと、俺は自傷気味に笑う。


 きっと、彩音が惚れるという事は西條はもしかしたら良い奴なのかもしれない。

 

「ごめんな、お腹すいたやろ? やっと晩御飯できたわっ。 と言ってもカレーやねんけどな……ってどないしたん? 何で泣いてるん? どっか痛むんか?」

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― 新着の感想 ―
[一言] 思ってたのとは違う形で死亡フラグが砕けていく…
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