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受け止める覚悟

 そう、俺に聞こえないように独り言をして小さくガッツポーズをする莉音の姿が見えるのだが『お前頭一つどころか三馬身以上出遅れているぞ』と教えてあげたい気持ちになってくる。


 しかしここでその事を教える事によって美咲と彩音の件でただでさえややこしい事になっているにも関わらず更にそこへ莉音まで参戦してくるとなるとか想像もしたくないので聞こえない体で黙っている事に決めた。


 戦いにおいて情報が如何に大事であるかという事を莉音は身をもって教えてくれるのはありがたいとは思う。

 

 しかしながら誤った情報しかもっていないのは誰のせいでもなく莉音のリサーチ不足が原因である為、この戦いで俺が手を差しだすのは美咲と彩音に対してフェアじゃないという理由で教えない方が良いだろう。


 それに俺に対して聞こえない体で独り言を言っているので、わざわざ『聞こえてたぞ』というのも失礼な気もする。


 うむ、我ながら完璧な言い訳である。


 そうは思うものの真実を知っていて教えないというのは、それはそれで罪悪感のような感情を抱いてしまう為に、ふきの下処理くらいは手伝ってやろうかな思うのであった。





 彩音さんが裕也様に告白をした時、何故だか知らないのだが私は裕也様を盗られると思ってしまった。


 私はあくまでも裕也様の側仕えであり、西條家に雇ってもらっている一人の使用人でしかないのにも関わらず、自分の感情を押し殺す事が出来ずに気が付いたら裕也様へ告白をしてしまった。


 あれを告白というには少しばかり苦しい気もするのだが、裕也様の反応からしてちゃんと私の本心が伝わっており、今更ながら『冗談です。 信じましたか?』と流すことが出来ないと悟ってしまう。


 その事が分かった瞬間、私はパニックになってしまい、裕也様とどう接して良いのかすら分からず恥ずかしさのあまりその場から逃げ出してしまった。


 そして、彩音さんが裕也様に告白した後に逃げ出した理由が分かった。 これは確かに無理だ。


 精神力だとか胆力だとかそんな物では太刀打ちできない感情が津波のように押し寄せて来るのである。

 

 私も彩音さんも、お互いに言うつもりは無かったけど口に出てしまった事からも、その感情を受け止める覚悟を持ってなかったという事なのだろう。



「う~~~~っ!」


 そして私は側仕えという事も忘れて当てがわれた部屋へと駆けこむとそのまま布団を被って羞恥心と、ついに言ってしまったという高揚感が治まるまで悶え続けるのであった。




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