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内縁の妻

 自分の身体なのに制御が効かず、どうにかなってしまいそうである。


 しかしながら、いくら『初めについ言ってしまったあの時であればまだ誤魔化せたのではないか?』と少しだけ冷静になり振り返ってみてそう思うのだが、その後に勢い任せで口に出した告白の言葉を無かった事にする事は出来ない為与えられた部屋のベッドに潜り込んで頭を抱える。


 異性からは何度か告白された事はあるのだが、自分から告白するのはこれが生まれて初めての経験である。


 それと同時にみんな今の私と同じよに緊張していたのだろうか? と思うと、今までもう少し優しく断ってあげれば良かったなとつい思ってしまう。


 それにしたってあんな告白の仕方は自分でもないと思ってしまえるような酷い内容であったと、思い返してみてはまた恥ずかしさから顔が熱くなる。


 今まで私に告白してくれた人でもあそこまで酷い勢い任せな告白をして来た人は一人もおらず、それが更に私の告白がいかに酷いものであるかというのが浮き彫りにされているようで更に羞恥心が刺激されていく。


 次裕也さんに会う時、どのような顔で会えば良いのか、そもそも私は裕也さんの前でまともでいられるのか。


 そして何で最終日ではなく、まだ二泊もある初日から言ってしまうのか。 どうせなら一旦改めて後日私の気持ちをしっかりと言葉としてまとめた上でもっと雰囲気の良いシチュエーションで告白しなかったのかと、次から次へと自分の至らなさと、こうしたら良かったのではないか? というたらればを考えてしまうのであった。





「…………ったく」


 まさか彩音から告白をされるとは思っていなかった。


 いや、根が真面目である分たとえ既に婚約者同士という関係ではあるもののいずれは告白してくると思っていたし、実際にこうして俺へ告白してきたのだが、俺の予想ではもう数年は先であると思っていた。


 それが俺の予想と反して婚約から半年も経っていない現段階で告白されるとは思っておらず、結果俺は無防備な状態で彩音の告白をダイレクトに受けてしまった。


 その為対応もなにも考えておらずどう返事をすれば良いのか良い案が思いつかない状態である。


「それで、どうするのです?」

「み、美咲……っ!? 見てたのか?」

「まるで浮気現場を見られた夫のような反応ですね。 これはもう私は裕也様の内縁の妻と言っても過言ではないのでは? と美咲は考えても良いのでしょうか? あと、ばっちり見ておりました」


 まさか、彩音との告白を他人に、それも美咲に見られているとは思っておらず、俺は何も疚しい事はしていないにも関わらず、何か見られてはいけないものを見られてしまったような感覚に陥ってしまう。

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