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勢い任せに告白をする

 そしてそんな私は偽善者であると突き付けられている感覚に陥ってきて鬱のループにハマってしまい抜け出せなくなってしまうので、ここ最近は考えないようにしていたのだが、それでもふとした拍子に考え込んでしまう。


 私の悪い癖である。


 それにしてもあんなに嫌っていた相手に対して今ではどうすれば自分に振り向いてくれるのかと悩み込むくらいに惚れてしまっているなどいったい誰が予想できただろうか。


 振り子理論とはよく言うものの、流石にこれは惚れ過ぎではなかろうかと自分でも思うくらいである。


 不良が捨て猫に優しくしている姿を見ただけで惚れるなど浅い恋だな。 不良じゃなくても捨て猫に優しくする人は優しくするし、むしろそっちの方が人として出来た人間ではないか──と少女漫画を読んで思っていたのだが、まさに今自分がそれに近い状況になっているので笑えない。


 そして、過去の私に『将来絶対に後悔するから即刻裕也さんの事を悪く思うのは止めて、色眼鏡をはずしてしっかりと彼の本質がどこにあるのか見極めなさい』と教えた所で絶対に信じないだろう自信がある。


 今思えばあの頃の私は世界を表面上しか見てこなかったんだなと嫌でも分からされる。


 所詮は子供だったのだ。


 それに引き換え妹は、襲われそうになった所を助けてもらったという事があったにせよ私よりも一年早く裕也さんの本質を見抜いているのである。


 姉としてなんと情けない事か。


「どうした、浮かない顔して? 気分でも悪いのか? 男の俺に相談しにくい事ならば犬飼を呼んでこようか?」


 そんな私を見て裕也さんが心配してくれる。

 

 ただそれだけで嬉しくなり、それと同時に胸が締め付けられてしまう。


 そして圭介に抱いていた感情は恋ではなく、たんなる尊敬や憧れであった事に気付かされる。


「好き……」

「……え?」


 言うつもりは無かったのだが、無意識のうちに私はその言葉を口にしてしまっていた。


「裕也さんの事が、気が付いたら異性として好きになってしまっていました……」


 しかし、こんな意気地ない自分は恐らく自分からその思いを裕也さんに告げるというのはもうこれが最後なのかもしれない。


 そう思うと『どうせ口に出てしまったのならばいっその事利用してしまえ』と、一生分の勇気を振り絞って勢い任せに告白をする。


「そ、それではっ!! そういう事なので、失礼しますっ!!」


 そして私は自分の想いを一方的に告げると裕也さんの前から逃げるように去ってしまう。


 意気地がないにも程があるとは思うものの、今の自分ではあれで精一杯なのである。 火が出そうな程顔が熱いし、心臓は壊れたかのように煩く鼓動を打つ。


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