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この後起こるであろう展開も分かる

 この風景が西條祐也にとっての日常であったのだと思うと『そりゃそうなるわ』とも思ってしまうが、この風景を作り出したのは半分が嫉妬心からくるものではあるものの、もう半分が自業自得の部分も大きい為、俺は彼を可哀想だとは思わない。


 それはある意味で西條祐也が望んだ世界なのだから。


 それにしても、記憶でこの日常を知った時もそうであったのだが、そして実際この風景をこの目で見た時も、辛いだとか嫌だとかこの場から逃げ出したいだとか、そういった感情は一切湧いてこない。


 この身体がこの状況に慣れており、少なからず俺の感情に影響しているのか、それとも、そもそもが別人であり俺へ向けられたヘイトではないから第三者的な立ち位置で見る事が出来ているのか、もしくはその両方なのか。


 理由はどうあれ今の所一番の懸念材料であった、記憶で見たこの空間を実際に体験してみて俺に向けられた数多の目線や聞こえて来る陰口に耐えられないのではないかとは思っていたのだが、どうやらその心配は必要なかったようだと取り敢えずは一安心する。


 しかしながらそれは俺の話であり、彼女にとってはそうではなかったようだ。


 ほんと、西條祐也が彼女の良さになぜ気づけなかったのか、不思議で仕方ない。


 いや、彼がそれに気づけていない筈がない。 彼女だからこそ彼は彼女を側仕えとして自分の側に置き続け、そして自分と適度に距離を保つ事こそが優しさだと本気で思っていたのだろう。


 でもその苦しみ(一方通行の思い)は自分が一番知っている癖に、本当に不器用な奴だったんだなと再認識する。


「気にするな。 俺自身が何とも思っていないんだ」

「で、ですが……っ!」

「美咲は誰の側仕えだ?」

「……西條祐也様です」

「だったら胸を張ればいい。 そして周囲の人間など俺に比べれば取るに足らない雑魚だと思えばいい。 それに、美咲に言われたら流石の俺も辛いものがあるが、奴らは所詮赤の他人だ。 赤の他人から何を言われようとも何も感じないし響かない。 だから、他人が何を言って来ようとも美咲がそれで気に病んでしまう事の方が俺は嫌だ。 だから胸を張れ胸を」

「あうあうっ」


 俺の代わりに、俺に向けられた悪意によって傷ついている人が隣にいるのならば、せめて俺だけは彼女に気にするなと声をかけるくらいはさせて欲しいと、そうする事によってほんの少しでも彼女が精神的に楽になってくれればと、そう思う。


 そんな俺の心情とは打って変わって周囲の陰口や視線は教室に近づくにつれて強くなって行く。


 そして俺はその原因を知っているとともにゲーム通りであれば(・・・・・・・・・)この後起こるであろう展開も分かる。

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