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心配になってくる

 というか、この状況で圭介を野放しにして彩音にアタックさせ続ければ、彩音の性格上圭介に対する好感度が下がり続けるのでは? と思ってしまいウチは圭介に対して何も指摘しなかった。


 あわよくばそのまま彩音に嫌われて仕舞えば良い。 そうすれば失恋で落ち込んでいる所をウチが慰めてやればそのまま付き合えるかもしれないのに、なんて事を思ってしまう。


 こういう所が、ウチの性格の悪さを表しており、自己嫌悪してしまう。


 でも、とウチは思う。


 今まで自分の気持ちを押し殺して我慢して来たのだから少しくらい良いではないか。 それと、女の子の気持ちに鈍感すぎる圭介も悪いとウチは思う。


「それで、やっぱり長文って事は絶対この手紙は暗号になっていて彩音の本心がどっかに隠されているに違いないと思っているんだ。 しかしこの手紙に隠された彩音のSOSを見つけ出す事ができないんだ」


 そしてウチは真剣な表情でどう考えても間違っていると誰もがわかっている事を、真実であると少しも疑ってすらしていない表情で話す圭介を見て思う。


 どうしてこんなやつを好きになってしまったのだろうか、と。


 でも逆にこれはこれで見方を変えれば手のひらの上で転がしやすいということでもある、と自分に言い聞かせる。


「うーん、せやな。 これだけじゃサンプルが少ないから明日もう一度、今度は圭介も長文で彩音に自分の思いの丈を綴って渡してみたらええんちゃうの? 知らんけど」

「そうか、それもそうだなっ! お前に相談して良かったぜ、ありがとうなっ!! 今夜手紙を書いて明日早速渡してみるわっ!!」


 そして、ずっと黙っているのも不自然なので圭介に適当なアドバイスをすると疑いもせず圭介がウチの提案した事を実践すると笑顔で感謝してくるのでそこはかとなく罪悪感を感じてしまう。


 そして翌日、圭介曰く手紙三枚分を彩音に渡したら手紙十枚分になって返事が返ってきたと言って放課後見せてもらったのだが、もはや圭介に対して咎める文章が無くなっており全文愚痴という名の惚気話の手紙を見て、いつか西條が彩音に刺されるのではないかと心配になってくるのであった。





「本当は嫌だけど来てあげたわよっ!!」

「嫌なら無理に今回の旅行に付き合う必要はないから、今から帰っても大丈夫よ?」

「そ、それで祐也っ! ど、どうかしらっ!?」

「ちょっと、無視は流石に怒るわよ?」

「あーうん、似合うんじゃないの? そのファッション。 可愛い可愛い」

「心がこもってないじゃないっ!! やる気あるのっ!?」

「やる気ってなんのだよ……」


 旅行当日、朝っぱらからキンキンキャンキャンと北条姉妹の声が頭に響く。


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