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命令

「それでしたら山道などを軽く散策して山の空気をめいいっぱい吸ってみたいですね」

「わ、私は釣りとかもしてみたいかも」

「二人ー組みで肝試し。 もちろん北条姉妹のペアと私と祐也様ペアで」

「何でペアが予め決まっているのですか?」

「そこはお姉ちゃんを守る為にも祐也と私のペアでしょ」


 そんなこんなで少し時期的には二、三ヶ月ほど早いのだが川、それも渓流と呼べるような場所の近くにある別荘での過ごし方を各々案を出し合ってその日は割りと平和に過ごす事ができた。


 たったこれだけ、別荘へ泊まりに行こうと提案しただけで平和な一日を過ごせるのであればもっと前からやっておけばよかったと思う。


 そして、とりあえず俺は遊漁券を買っておくように田中に連絡するのであった。





「ほんまに誘うん? うちはやめといた方がええと思うで?」

「うるさいな。 南川は俺ではなくて西條の味方なのか?」

「そうやないけど、普通に考えたら彩音が首を縦に振るとはうちは思えへん言うとんのや」


「それこそやってみないと分からないだろうっ!! それに彩音は無理矢理西條に付き合わされているだけだっ! ここ最近俺にそっけない態度をとるのも裏で西條が卑怯な手段、それこそ婚約を迫った時のように家族を人質に取られている可能性だってあるし、間違いなくそうに違いない」


 俺の作戦を聞いた南川は『何を言ってんだコイツ』と言いたげな表情で俺にその作戦をやめるように言ってくるのだが、なぜこの作戦が失敗するという考えに至ったのか俺には理解できない。


 むしろ喜んで俺に着いてきてくれるに決まっている。


 そんな事を思っていると彩音が西條と一緒に登校してきたではないか。


 西條と一緒という所は腹立たしいのだが結局はこれも西條が無理やり命令しているからだとするのならば一刻も早く彩音をこの地獄から助けてやらなければという思いがより一層強くなってくる。


「あ、彩音っ!!」

「……東城……何かようかしら?」


 そして俺は意を決して彩音に声をかけるのだが、帰ってきた言葉は以前みたいな陽だまりのような声音の返事ではなく、冷たく突き放すような声音で帰ってくる。


 ちなみに西條は「彩音に用事があるみたいだし俺はそのまま自分の席に行くわ」と、俺と彩音を交互に見た後そう言うと、まるで興味なさげにと自分の席へと歩いていった。


「と、東城ってお前……何で今まで名前呼びだったのに苗字で呼ぶんだよ。 そうか……これも西條に命令されているんだな」

「命令? 命令って何の事を言っているの?」

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