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不器用にも程がある

 そう言いながら喋る美咲なのだが、どの記憶の中のどの美咲よりも助舌で、そして何よりもどの美咲よりも楽しそうであった。


「それで、こないだはお父様と…………あぅっ」

「どうした?」


  そんな美咲を側仕えとして置きながら良く邪な感情や恋愛感情を祐也は抱かなかったなと思いながら未だ楽しそうに喋り続けている美咲なのだが、なぜか急に顔を湯気が出そうなほど真っ赤にしたかと思うと、俯いて口をつぐんでしまうではないか。


 もしかしたら俺は何か美咲に対してとても失礼な事をしてしまったのではないかと内心焦りまくりなのだが、それを表に出さず、何とか美咲に話しかける。


「いえ、その……私ばかり喋って、祐也さんは退屈なのでは? それに落ち着きのない女性と思われたのではないかと、その思ってしまいまして。 そうですよね。 祐也様ほどの男性が私如き女性の話など聞いてもつまらないですよね?」


 そして美咲は泣きそうな声音で自分の感情を隠さずに話してくれる。


 そこで俺は気付かされる。


 学園でも俺の側仕えとして身の回りの世話をしてくれる美咲は、そもそも今まで友達と呼べる友達は一人もできた事が無いのではないか? という少し考えれば誰だって思いつく答えに辿り着いてしまう。


 なんでいままで気づけなかったのか。


 いや、気付いた上で気付かないフリを西條祐也はしていたのだ。


 それは西條祐也が唯一甘えられる人物でもあったと言う事なのだろう。


 本当は彼も美咲が今の状態では友達などできない事は分かっていたのだけれども、それ以上に西條祐也が一人になる方が嫌だったのである。


 一人で他人からの敵意を籠った目線を向けられるのは、とてもではないが耐えられないと判断したのだろう。


 何というか、不器用にも程があるだろ……。


「いや、そんな事はない。 むしろ美咲のチーズバーガーの話はとても面白かった。 美咲さえよければチーズバーガに限らず色々な面白い話を聞かせてもらないか?」

「は、はいっ!!」


 そして、俺がもっと美咲の話を聞きたいと答えると、今まで泣きそうになっていた表情が、パッと明るい表情に一瞬にして変わり、楽しそうにあれやこれやと話をしだす。


 こう言うのを花が咲くようにと表現するのだろう。


 そう思える程には美咲は花にも負けず可憐であると改めて思うのであった。




「おいっ、西條が来たぞ」

「ちっ、死ねば良いのに。 交通事故でも何でも良いから死んでくんねぇかな?」

「ねぇ、あのクズが北条さんと婚約したって本当かしら?」

「本当みたいよ。 北条さんも可哀想にね」


 学園に俺と美咲を乗せたハイヤーが到着し、運転手に感謝を伝えて降りた瞬間、俺の耳に聞きたくもない罵詈雑言が聞こえ始め、そして周囲は嫌悪感を隠そうともしていない目線で俺達二人を遠巻きに眺めているのが見たくもないのに目に入ってくる。

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