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頭撫でてヨシヨシ

 そんな事よりも今は目の前の美咲を楽しませる事が重要であろう。


 もしかしたら、美咲は周りの学生が過ごしているような週末というのを体験してみたのかもしれないと思えばイーオンで休日を過ごしたいという今回の願いも分からないでもない。


 そんな彼女の、本来であれば過ごしていたであろう日常を奪ったのは理由はどうあれ間違いなく俺であるのだから今日くらいはそんな彼女のささやかな願いを全力で叶えてあげるべきであろう。


「もしかして、あの日私を助けた事、そして私を祐也様の側仕えとして迎え入れた事を後悔していたりします?」

「……後悔はしていない。 だが、あれが最善だったかというと今思えば他に別のやり方、それこそ美咲が普通の学生を謳歌できるようなやり方があったのではないか? とは思っている」


 これは西條祐也本人の本心でもある事を俺は知っている。


 なんだかんだで小心者だからこそそれがバレないように周囲に威嚇していたのもあるのだが。


 そして、俺自身も同じ答えである。


 当時小学生だという事を踏まえれば上出来だろう。


 俺が小学生時代に同じことができたかというと恐らくできないし、最悪自分に火の粉がかからないように傍観していただろう。


 ただ、大人となった今だからこそ『子供だけで解決せず大人も交えて話し合えば良かったのでは?』と、そんなたらればを思ってしまう。


「まったく……薄々そうじゃ無いかと思っていましたけど、やっぱりそうでしたか。 別に私は祐也様の側仕えとして少し変わった学生生活を送れるというのは、普通の学生として過ごす事よりも何倍も嬉しくて楽しくて気がつけば高校二年になっていた程やりがいのある生活でしたよ? それこそ街の皆様に『私は西條祐也様の側仕えをしているんだぞっ!』と一人一人自慢したくなる程には」


 そしてあの日の事を少なからず負い目に感じている事を正直に言うと、美咲はとても綺麗な、それこそこの世で一番美しいと思えるような笑顔でそう言ってくれる。


「嬉しいことを言ってくれるな。 仕えてもらっている俺としてはこれ程嬉しい事はない」


 あぁ、この込み上がってくる感情は間違いなく西條祐也本人の感情で間違いないだろう。


 出なければ俺が会って一ヶ月前後の彼女の言葉に涙を流すわけがないのだから。


 きっと、彼も彼女の言葉で報われたのだろう。


「何泣いているんですか? 頭撫でてヨシヨシしてあげましょうか?」

「泣いてない。 これは汗だっ」

「はいはい、ヨシヨシ。 祐也様、あの時私を助けてくれてありがとうございます。 今までお疲れ様でした。 そして、これからもよろしくお願いします」

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