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精神的に突き刺さる


「とりあえず今この場所は俺のプライベートな空間であるという事も考慮してくれると大変ありがたいんだが」


 もし俺が童貞かつ思春期真っ只中であれば間違いなく一晩の過ちをここで犯していたであろう。


 しかしながら今現在の俺は酸いも甘いも経験した身である大人な男性である。


 これくらいの誘惑とも取れないような雰囲気も何もないやり方では何も感じない…………事も無いのだがぎりぎり何とか自制できるのである。


 このまま湯船に浸かった状態で前だけに視線を向けて、決して彼女達がいるであろう背後へ振り向かず、ただ精神を集中すれば良いだけだ。


「これは……」

「私たち二人が争っている場合では無いようですね」


 しかしながら俺のこの態度が逆に彼女達の女性としての尊厳を傷つけてしまったようで、今さっきまでくだらない事で争っていたにも関わらず次の瞬間には共闘すると言い始めるではないか。


 何でそうなるんだよと叫びたくなるのだが、そもそもここがエロゲの世界なのだとすればこういう事もあり得るのか? と変に納得してしまう俺がいるわけで。


「色々焦っている彩音の気持ちも、それに触発されたであろう美咲の気持ちも分からないでもないが、そういう行為はせめて俺がしっかりと責任を取れる年齢になってからにしてくれ。 今俺は学生である以上ここで万が一お互いの自制が効かずにそう言う行為をしてしまい、もし子供ができてしまった場合を考えると流石にリスクが高すぎる」


 なのでいかにもそれっぽい事を言ってみるのだが、彩音も美咲も『さんざん表では世間様に迷惑をかけてきた人が何を今更どの口が言っているんですかね。 あれですか? 意外にヘタレですか?』という視線を俺に向けてくるではないか。


 この視線に関しては異議申し立てをしたいのだが、実際事実なのだから精神的に突き刺さる。


「そうですね……私も少し焦りすぎたかも知れませんし、祐也さんの気持ちを無視したのは確かです。 ごめんなさい」

「私は西條祐也様の側仕えですから、いつでも呼ばれても良い準備はできてますので、ええ」


 そして二人は風呂場から出て行くのだが、少しだけもったいなかったと思う俺であった。





「祐也様っ!! 今日は本当にありがとうございます。 私如きに付き合っていただき、私犬飼感無量でございますっ!」


 今現在、休日を利用して美咲と某デパート、イーオンへと繰り出している。


 というのもいつもお世話になっている美咲に対して何かして欲しい事はないかと聞いてみた結果、一緒にデパートへ行ってみたいと言われたからである。

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