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どう考えても何かある

 それでも、裏で努力をしようとしている若者の姿は俺の目には眩しく映るのであった。





「なぁ、今日こそは俺と一緒に昼ご飯を食わないか?」

「何馬鹿な事を言っているのよ。 私には婚約者がいるのにその婚約者である祐也さんを無視して別の男性と昼ごはんを食べるはずがないでしょう。 ほら、馬鹿いってないでここから退いてよ。 あんまりしつこいと流石の私も怒るからね?」

「なっ、ちょっと待てよっ! 話はまだ終わってない…………くそっ!」


 ここ最近彩音が俺に対して明らかに冷たくなった。


 まず以前までであれば婚約が決まった後も西條ではなく俺の元で休み時間は過ごす方が多かったし、それこそ昼休みは絶対俺と一緒に過ごしていた。


 しかしながら彩音がまるで恋する女のような表情で西條にお弁当を作ってきたと言い、西條と一緒にお昼を食べ始めた時から明らかに彩音は俺を避け始めたではないか。


 間違いなく彩音は西條に何かされたに違いない。


 それこそ家族をダシに脅されているのかもしれないし、実際この婚約も家族を人質にされて西條と婚約をしたような物である。


 そのため今回の彩音の態度の変化も西條から何かしら脅されているのではないか? と思い、彩音にその事を聞こうとしても先ほどのように取り付く島もない状態である。


 そして何よりも腹が立つのが、まるで西條に好かれようと犬飼と争いながら西條の身の回りの世話をし始めた事である。


 あれではどう見ても彩音は俺ではなく西條の事を片思いしているようにしか見えないではないか。


 ありえない。 と俺は思った。


 そもそも彩音は俺以上に西條を嫌っていたのである。


 その彩音が、元から嫌っていた西條からこんな強引な婚約をさせられて、今更西條に惚れるはずが無いからである。


 どう考えても何かある。


「もうやめとき」

「……何をだよ」


 そこまで考えたその時、いつの間にか隣にいた南川に止めるように言われてしまう。


 何を止めるのかは、言われなくても何となくわかるが思わず反発してしまう。


 当たり前だ。 ここで諦めたら陰で泣いているであろう彩音を救い出す事はできないし、彩音にだけ辛い思いをさせる事を俺自身が許さないからだ。


「分かっとるくせに。 あと、あの彩音の表情はどう考えても脅されているだとか強制されているだとかいうもんじゃ無いことくらい、彩音のあのイキイキしとう表情を見れば誰だってわかるはずや。 このクラスで彩音の気持ちに気づいてないのは圭介だけやで。 いや、うちからしたら気付きたくなくてわざと気付かないようにしているように見えるわ」

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