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俺は空気が読める男なのだ

「それは……私も賛成ね。 ちょっとこの視線では流石に食べづらいですからね……」


 そう言いながら彩音は教室を見渡す。


 そこには俺たち二人の一挙手一投足を見逃さまいと眺めているクラスメイトたちの姿が見える。


 その中に一人、明らかな殺意を込めて俺を睨みつけて来る奴がいるのだがあえて気付かないフリをする。


 アイツに付き合っても碌な事にはならないだろう事は火を見るより明らかであるのにわざわざ自分から面倒ごとに首を突っ込むのも馬鹿らしい。


「じゃあ決まりだな」


 そして俺たちは人気のない場所へと向かうのだが、その間約一名がどんなに撒こうとしても付いて来るので美咲に振り払ってもらった。


 そんなこんなで結局は合鍵を使って開けて屋上へ来たのだが、ここならいくら何でも鍵を持ってないと来れないので一番安全だろう。


 ちなみになんで俺が屋上の合鍵を持っているかというと、この身体の本来の持ち主である西條祐也が教員へ賄賂を送って作らせた逸品だったりする。


 正直、前の世界では学校の屋上でお昼を食べると言うシュチュエーションは高校に上がってみたらやりたい事ランキング堂々の一位だったのだが、蓋を開けてみれば屋上への扉は鍵がかかっており一般生徒は行けないようになっていた。


 今考えると当たり前の事なのだが当時まだピュアだった俺の心は傷ついたものである。


 その夢が十数年越しに叶うという事で俺は今少しばかり興奮していたりする。


「では、こちらへどうぞ」


 そして俺、美咲、彩音が揃ったところで美咲がどこからともなく取り出したシートを広げて座って食べても汚れないようにしてくれるではないか。


 流石よくできた側仕えである。 そして俺はそんな良くできた側仕えである美咲の頭を撫でてやると実に幸せそうな表情で撫で受けしてくれるので、その幸せそうな表情を見るとこっちまで幸せそうになってくる気分だ。


 そんな俺たちを彩音が羨ましそうに眺めている事には気づけないでいた。


「ほ、ほらっ。 いつまでそうしているのよ。 早くしないと昼休みは無くなるわよ」

「それもそうだな」


「まったく、空気の読めない売女ですね……」


「ん? どうした美咲?」

「いえ、なんでもないです」


 なんか美咲から毒が吐かれた気がしたのだがきっと気のせいだろう。


 うん。 聞かなかった事にしよう。 俺は空気が読める男なのだ。


 そして三人でシートの上に座った所で彩音が俺と美咲に弁当箱を渡してくると、何かを言いたそうに俺へ視線を向けては外してを繰り返し、口を鯉みたいいぱくぱくし始めるではないか。











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