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火の玉ストレート

「…………まぁ、お前がそう思うんならそうなんじゃないの? お前の中ではな」

「っ!?」


 そして、美咲のボケを拾ってしまうと収集がつかなくなってしまう為、美咲はスルーしつつ、彩音にも半年ROMればりに煽り文句として良く使われる言葉を向けると、彩音は何かに気づいたのかハッとした表情を一瞬したかと思うと少しばかりバツが悪そうな表情で俯くではないか。


 アイツらしくもない。


 いつもであればここで何か一言は言い返す筈であるのだが、それすら無いので何か変な物でも拾って食ったんじゃないだろうな? とか思わず思ってしまう。


「彩音さん、どうしたんですか?」

「み、美咲さん……」

「何か変なものを拾って食べたんですか?」

「なっ!? い、犬猫見たいに言わないでくださいよっ!!」


 そんな事を思っていると、美咲がまさに俺が今思っている事を火の玉ストレートでぶん投げるではないか。


 初めこそ彩音は自分を気遣ってくれる美咲に対して嬉しそうな表情をしていた彩音も美咲の火の玉ストレートを食らっては一瞬にして嬉しそうな表情も消え去った。


「美咲、いくら何でも言い過ぎだ」

「ゆ、祐也様……ごめんなさい」

「まぁ、悪気がないのは分かっているから次は気をつけるようにな」

「は、はいっ!」


 流石にこれは主人(雇用主)としてどうなんだと思った俺は、自分自身も同じことを思っていた事は隠して美咲に軽く注意するのだが、そこはかとなく美咲が俺に注意されて嬉しそうなのは気のせいだろうか? いや、きっと気のせいだろう。


「それと彩音。 美咲が心配するように今日は朝から様子がおかしいぞ。 具合が悪いのならば今日は学校を休め。 連絡は俺がしといてやるから」

「そ、そんな事はないわ。 体調は万全ですっ!」

「ほらそれ。 無理に声を張っているだろ? そこまでして体調が悪いのを隠す必要はないし、むしろ体調が悪ければ悪いと隠さずに言ってくれ。 お前が倒れでもしたら面倒だし、風邪などの場合は他人に移す可能性だってゼロではない。 それに無理して体調不良を長引かせるのも非効率だ」

「ひ、非効率ってそんな言い方ないじゃない……」

「それは言葉のあやだ。 だが、気分を害したのならば謝ろう」


「何よ……普段と様子がおかしいのはアンタの方でしょ……調子狂うじゃないのよ」


「何か言ったか?」

「何でもないわよ」

「そうか。 ならとりあえず今日は学校は休んどけ。 これは強制だからな」


 とりあえず彩音がボソッとつぶやいた言葉は確信をついているので聞こえないフリして半ば強引に学校を休むように言う。


 なんだかんだ言ってもまだ未成年の子供が好きな異性がいる状態で嫌いな男性と婚約者にさせられたのだ。


 いくら家族のためとはいえ彼女のストレスは想像を絶するものであろう事は容易に想像できるし、当然精神的にも疲れが溜まっているだろう。

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