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本当に、良い娘である

 今日学園の帰りにマックでも寄って買い食いでもするか。


 その為には俺の側仕えの使用人である犬飼美咲を共犯者にさせてチクられるのを未然に防ぐ必要があるだろう。


 朝食を食べ終えた俺は星城学園への登校準備を始めながらそんな事を考える。


「どうなされたのですか?」


 そんな俺の雰囲気がいつもと異なるのを感じとったのだろう。


 不思議そうな表情で美咲が俺へ問いかけてくる。


 この犬飼美咲なのだが俺の側仕えという事もあり就寝時と入浴時、そして家族との時間以外は基本的に俺の側にいる。


 もちろん通う学校は俺と同じ星城学園であり、既に女生徒用の制服を着込みいつでも登校可能な出立だ。


 その美咲が、なんとなく犬っぽい雰囲気で小首を傾げて不安そうに俺を見つめてくる。


「はぁ……」

「も、申し訳ございません祐也様っ!! 立場も弁えずわたくし如きが口答えをしてしまいました事を謝罪いたしますっ!!」


 俺は、西條祐也から引き継いだ記憶を遡り、美咲に対して酷い扱いをしていた事を知ると思わずため息を吐いてしまったのだが、それを美咲は自分に非があると感じたのか今にも泣きそうな顔で俺へ謝罪してくる。


「いや、すまん。 そういうつもりでは無かったんだ。 それと、今までかなり酷い言動や態度をとってきてすまなかった。 謝って済む問題ではない事は重々理解しているつもりではあるのだが、それでも謝罪くらいはさせてくれ。 慰謝料が欲しいと言うのでればそれ相応の額を渡そう」

「あ、謝らないで下さいっ!! わ、私の方こそ祐也様の苦しみを理解しつつ何もお役に立てなかったので……その……お、おあいこです、そうっ、おあいこですっ!! これでチャラにしましょうっ!! なので頭を上げてくださいっ!!」


 そして俺が今まで美咲に行ってきた様々な事を謝罪すると、美咲は一瞬驚愕するのだが何が起こったのか理解すると血相を変えお互い様なので両成敗だと言ってくれるではないか。


 その言葉が本心かどうかは分からないのだが、それでも美咲ならば騙されて酷い目を見ても良いかと思えるのでとりあえずは美咲の言葉を信じることにする。


 もし、美咲の本心からの言葉であるのならば、こんな身近に西條祐也を見てくれている人が居るのに何で、と思ってしまうのだが人間追い詰められれば追い詰められる程周りが見えなくなるものである。


「あ、ありがとう……」

「い、いえ……」


 うーん、なんだろうか。 この甘酸っぱいような気まずい雰囲気は。 まさか美咲は西條祐也の事を少なからず……いや、それは流石に無いか。


 ただ単に西條グループの権力を恐れているだけであろう。


 とにもかくにも、美咲を共犯者にする交渉を始めなければと、放課後にマックへ行くことを誘ってみると美咲は快く承諾してくれたのだった。


 本当に、良い娘である。

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