何だか腹が立ってくる
「わ、分かったっ! 俺らがすまなかったっ!! コイツは今すぐ俺たちで担いでここから立ち去るから、もう一発だけはやめてくれっ!!」
そして私を襲おうとした三人の男性は変な歩き方をしながらこの場から去っていく。
「……強いんですね」
「当たり前です。 護衛も兼ねて西條祐也様の側に仕えさせていただいているのですから。 当然、彼に楯突くようなゴミ虫はこうやって潰したりもしますよ?」
「それは、弱い者いじめと何が違うのでしょうか? あなたのその強さは弱い者を痛ぶる為にあるはずでは無いはずです」
そして私は、今感じている事をそのまま犬飼さんに伝えると、彼女は鳩が豆鉄砲を喰らったような表情で私の顔をまじまじと眺めた後、お腹を抱えて笑い出すではないか。
私はいたって真面目な話をしているのに何故ここまで笑われなくてはいけないのだろう。
そう考えると何だか腹が立ってくる。
「どうして笑うのですかっ!?」
「そりゃ笑うでしょう。 あなたは今、両親の恩人で妹の恩人でもあり先程に関しては貴女自身も守ってくれた相手に対して、そして更に先程直接貴女を助けた私に対して唾を吐きかけるような事をしているという自覚が全く無く、更にまるで自分が正しいかの如くこの私に説教くさい事を話そうとしているのですよ? こんな馬鹿げた話、笑うに決まっているでしょう」
そして犬飼さんはそういうと胸ポケットからスティック状のICレコーダーを取り出して再生させる。
『あ、そうだ。 お前あの北条と許嫁になったんだよなぁ? まったくふざけた話だと思わないか? 俺が犯す前にヤリまくってんだぜ? 舐めた真似しやがって。 俺めっちゃ傷ついたわ。 どうせなら西條の野郎に言いがかりをつけてボコった上にアイツの金魚の糞の犬飼と一緒に北条を譲って貰うように話し合いをするべきだと思うんだが、お前達はどう思う? どうせ犬飼も北上も使い古しだからお前達も楽しんでもいいぜ? アイツもちゃんと話し合えば分かってくれるだろうぜ』
そこまで流した後犬飼さんは再生を止めるのだが、私はその内容に絶句する。
「昨日盗聴した内容です。 ちなみにコイツらは日常的に女性を襲っています。 それこそ今日の晩御飯を選ぶかの如く、軽い気持ちで女性を物色しては襲っている奴らです。 当然女性を襲うことに罪悪感も何も感じていない事は明白でしょう。 当然、アイツらを野放ししていれば今頃貴女は襲われているでしょう。」
「そ、そんな奴らだと知っていれば──」
「知ろうとしなかったのは貴女です。 それに、あの状況を見てまだ私や西條祐也様を批判するような貴女が知った所でどうせ今のように批判するのは目に見えてます」