もう一発欲しいのかしら?
「あがぁぁぁああああっ!?」
西條祐也と一緒に帰ったと思っていた犬飼さんが何故かまだ残っており、しかも私が絡まれている事が見えているにも関わらずやって来るではないか。
流石に小柄な犬飼さんでは敵わない相手だから逃げるように言おうとしたその時、件のボクシング部の男性が股間を押さえ泡を拭き、白目を剥きながら頭から倒れる。
「ふん。 そんな弱点をぶら下げておいてよくそんな堂々としていられますね。 てっきりファウルカップを股間に使っているからこそのお股びらきの警戒心無さにアホヅラという可能性も考慮はいたしましたが、本当にただのバカだったようですね。 まぁ、私のご主人様である西條祐也様に喧嘩を売るくらいなのですから当然といえば当然ですが」
「……これはちょっとやり過ぎのような」
「は? 犯されそうになった貴女がそれを言いますか。 あまりにも危機管理能力がないというかお人好しというかその両方なのかただの何も考えていないバカなのか。 私は貴女と違って襲ってきた相手には一切容赦はいたしませんし、それくらいの覚悟すら無いのならば初めから襲わなければ良いだけですし、それすら分からない者は人間ではなくてただの本能に忠実な動物、それこそ野猿ですので去勢をして新たな被害者が出ないようにするのは未来の被害者を無くすという点においても、潰されても文句は言えないと思いますけど?」
「そ、それはそうかもしれないですけど……」
確かに犬飼さんの言っている事には一理あるとは思うのだが──
「それともまさか、話せば分かり合えるとでも言い始めるのでは無いでしょうね?」
「わ、私たちは人間ですっ! 動物と違って言葉で相手に自分の気持ちを伝えることができるんですよっ?」
「じゃあ何故この二人は息を殺して私を襲おうとしてるんですかねっ!」
「がっ!?」
「グフッ!?」
そして犬飼さんは、残り二人が犬飼さんに奇襲をしようとした瞬間、その小柄な体型を利用して相手の懐に潜ると一人は股間を蹴りあげ、もう一人は空いた右手で握り潰す。
その一連の流れは美しく、素人のそれではないように見えた。
「私は、西條祐也様と違って優しくありませんよ。 子供を作る事ができない身体にされたくなければこの肉の塊を担いでこの場から消えなさい」
「ちょっと、待ってくれっ!」
「わかった、言うこともちゃんと聞いてコイツをかついでこの場から離れたいのは山々だが……っ」
「股間の痛みが引くまで待ってくれないかっ!?」
「もう一発欲しいのかしら?」




