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やはり腐っている




「おいっ! あんなクズ野郎なんか待ってなくても良いだろっ!? 無視すれば良いんだよっ!!」

「そうもいきません。 祐也様はれっきとした私の婚約者なのですから。 その婚約者が来るのだと分かっているのならばこうして待つのは当たり前でしょう?」

「あ、当たり前なもんかっ! お前もこの婚約は嫌なんだろうっ!? だったらこんな婚約なんか破棄しちまえよっ!!」


 美咲と一緒に目的地である星城学園前停留所で降りたのだが、その瞬間外が騒がしい事に気づく。


 どうやら彩音が何故だか知らないのだが律儀に俺が来るのを待っていたらしく、そしてその彩音が俺を待つという行為が我慢ならないのかエロゲの主人公である東城圭介が彩音に俺を待つ必要なんか無いと叫んでいるところであった。


 その光景を見て俺はただただ『面倒臭い』と思い、星城学園に着くなりテンションはだだ下がりである。


「? どうしました? 祐也様。 急に私の頭を撫でられて。 私としてはとても嬉しいのですが……」

「いや、やはり美咲は俺のオアシスだったんだなと再認識したまでだ」

「そんなっ、あ、ありがとうございます……っ」


 そして俺は下がりきったテンションを美咲の頭を撫でる事により何とか上げて歩き始める。


 というか、俺が撫でやすいように頭の角度を調整しながら頭を差し出してくる美咲が可愛すぎる……。


「あ、クズだ……」

「ほんと、婚約者を先に行かせて校門で待たせるなんて、その性格腐ってんじゃ無いのか?」

「最低……。 彩音さんも婚約なんて破棄してしまえば良いのよ」


 そして停留所から星城学園の校門へと歩き始めると、今まではその外見から異性からの黄色いヒソヒソ声が聞こえていたのだが、それが今は俺を侮辱する言葉ばかり聞こえてくる。


 その余りにも分かりやすすぎる変化に俺は思わず笑いそうになるのをグッと堪える。


 こんな言葉のナイフで毎日毎日毎日毎日毎日刺されていれば最終的に自殺を選ぶ彼の気持ちも今ならば分かるような気がする。


 特に、外の世界との差を実際に肌で感じた今ならば余計にこの光景が異様だという事がくっきりとわかる分、尚更である。


 せめて彼が、俺が今日バスで通学したように、美咲と昨日マックへ行ったように、外の世界を一回でも肌で感じて、今この環境が星城学園の特殊な環境だと気付けていれば、きっと心が粉々になって消えて無くならなかったかもしれないし、自殺を選択しない未来もあったかもしれない。


 きっと彼はそんな単純な事にすら気づけない程に追い詰められ、まるでこの星城学園での彼の評価こそが全てであるという偏って狭い視野で見た価値観が、この世界の全てだと勘違いせずに済んだだろうに、と思わずにはいられない。


 彼を壊したのは、お前らだ。 お前らこそ屑だ。 西條祐也にならば、どんな酷い言葉を吐きかけても許されるというこの世界(星城学園)の価値観はやはり腐っている。


 確かに、以前までの彼は客観的に見ればクズに見えたかも知れないが、今の俺からすれば、彼の記憶を引き継いでも尚この学園の生徒達の方がよっぽどクズではないか。


「おい、東城圭介。 俺の婚約者に何をしている? 邪魔だ、退け」

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