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昨日助けなきゃ良かった

「あら祐也様ったら、いけませんわ。 婚約者の前ですよ。 それに私と祐也様は住む世界もお立場も違いすぎますわ」

「美咲、いちいち煽らないでいいから」

「すみません……まさか祐也様から私のことをオアシスと言われる日が来るとは思いもしなかったもので、思わず舞い上がってしまい、目の前の手頃な相手にマウントを取ろうとしてしまいました」

「お、おう……そうか」

「そうです」


 何だろうか? このギスギスした空気は。


 主に美咲が原因で空気がギスギスしている空気を作り出しているように感じるのだが、この姉妹と美咲との間に昨日何かあったのだろうか。


 そして例え何かあったとしても絶対にそのことについては触れてはいけないという、空気を感じ取ってしまうのであえて気づいていない体を装って朝食を食べ始める。


 俺が首を突っ込んだところで余計に空気が悪くなる未来しか見えないので、我関せずを貫く。


「そういえば、北条……は、そうか、今二人いるのか。 ……彩音は制服を着ていると言う事は具合も良くなったと言う事で良いか?」

「ええ、そうですね。 昨日はお見苦しい姿をお見せして申し訳ございません。 更に、私の体調を気遣ってもう一日宿泊させていただいただけでなく、妹が襲われそうな所から助けていただいたばかりか、こうして二人揃って朝食までいただけた事を感謝します」

「いや、まぁ、体調が戻ったんなら良んじゃねぇの? それに妹の莉音も何事もなく、男である俺にあそこまで食ってかかる事ができるという事はトラウマにもなっていないみたいで一安心だ」

「は? べ、別にアンタに助けて貰わなくても私一人で余裕で対処できたしっ!! 有難迷惑よっ!!」

「それでも、何事もなくて本当に良かった……」

「な、何よ……。 調子狂うじゃない……っ」

「え? 何だって?」

「何でもないっ!! うっさい黙れっ!!」


 俺はここであえて聞こえないフリをするのだが、どうやらこの感じだと彩音も莉音も俺に対するヘイト値は最悪の数値ではないようで、俺は気づかれないようにホッとため息を吐く。


 これで幾許かは俺の死亡フラグも減ったんじゃなかろうか。


 少なくともこの姉妹から殺される死亡フラグはだいぶマシになったと思いたい。


 出なければ昨日わざわざ真夜中に抜け出して刺される危険性もゼロではないようなクズ相手に妹である莉音を助けた意味が無くなってしまう。


 そんなことを考えながら、俺はその後まるでお通夜のように静まり返った空間で朝食を食べ終えると、学園へ登校する準備をしに一度部屋に戻り、美咲と一緒に外に出るといつものように黒塗りのリムジンがいつでも出発できる状態で待機してくれている。


 そして、当然のように北条姉妹までいるではないか。


「お、遅いっ!! いつまで私たちを待たせるのよっ!!」


 何だろうか、昨日助けなきゃ良かったと思う俺の心は汚れているのだろうか?

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