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よっぽど性根が腐っているように思えます


 そんな会話をしつつ私達は小一時間程お風呂を堪能して湯舟から出て脱衣場へと移動する。


 すると、そこには犬飼さんが丁度脱衣所へと入ってくるところであった。


「あ……」

「い、犬飼さん……」

「……こんばんわ」


 そして私が気が付いたという事はお姉ちゃんと犬飼さんも当然気付く訳で。


 脱衣所に気まずい空気が流れ始める。


「た、確か私の一つ上の先輩で、アイツ……西城裕也の側仕えさん……でしたよね?」

「そうですが、それが何か? 何か使用人に用があるのでしたら他の方を当たって下さい。 私は西城裕也様専属の側仕えですので」

「あ、いや、用とかはないんですけど犬飼さんもあんな奴の側仕えなんて大変でしょう? 我儘で、性格はクズで、無駄にプライドが高くて偉そうで──」

「こらっ、莉音っ、やめなさいっ!!」

「だってそうじゃん。 しかもお姉ちゃんの気持ちを無視して強引に婚約するような奴だよ? 他人の気持ちなんかどうでも良いとでも思っているんでしょうね、きっと」

「……なるほど。 ……言いたい事はそれだけですか?」


 自分的には犬飼さんも少なからず、いや、毎日休みなく四六時中西城裕也の側でアイツの我儘を聞いているのだ。


 私達でさえアイツに対する文句の一つや二つはあるのだから、当然犬飼さんもあいつに対して文句がある事だろうと思い話しかけてみたのだが、かえって来たのは私の言葉に共感するような返事ではなく、私達姉妹をまるで可哀そうな人間を見るかのような冷たい視線と、私達姉妹から精神的な距離を取ろうとして突き離そうとする冷たい声音の返事であった。


「え、いや……その……」


 私が当初想定していた結果と真逆の反応をされて思わず言葉に詰まってしまうのと共に、あのクズの事を悪く言って何で責められるような視線と態度を取られないといけないのかという苛立ちも同時に沸き出てくる。


「わっ、私の妹が無礼な事を言ってしまい、すみません」

「お姉ちゃんっ!?」

「無礼? 無礼という言葉で片づけられる内容では無かったと思うのですが? それと、何の意味も価値も無い今の貴女からの謝罪から感じ取れる、とりあえず謝りさえすれば許されると思っている偽善者ぶった貴女のその態度も、何もかもが気に入りません。 それに妹さんはレイプされかけた所を助けていただいただけではなく、ご両親にご両親が運営していた北条グループ、更に星城学園を自主退学して身体を売ろうと考えていたお姉様をも助けていただいた恩人に対して、良くもまぁそんな言葉を吐けますね。 私にはあなた方姉妹の方がよっぽど性根が腐っているように思えますが? これ以上話す事も無いでしょうし、私はここで失礼させていただきます」



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