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警戒して警戒して損はない




「何なのよ、アイツ……。 調子狂うじゃないのよ。 クズのくせに良い人ぶりやがって……」

「まぁでも何事もなくて良かった。 本当に昔から莉音は後先考えずに突っ走るんだから。 私やお父さんにお母さんの気持ちにもなってよ」

「ご、ごめん……お姉ちゃん」


 今私は彩音おねちゃんと一緒に西條家のお風呂に入っていた。


 しかも腹が立つのが私の家のお風呂よりも広いではないか。


 少し考えれば当たり前なのだが、それでもアイツに負けていると思うとそれが何であれ腹が立つのは腹が立つのだ。


「それはそうとお姉ちゃんはアイツに何かされてない? 大丈夫? 何なら今から私とここを抜け出しても良いよ?」


 そしてアイツはアイツだ。


 あのクズがお姉ちゃんと婚約をしてわざわざ西條家に泊めさせている状態で何もされていない訳ない。


 きっとお姉ちゃんは昨日、みんなの事を思って我慢したのだろう。


 そのことがどことなく寝不足そうで、そしてどこか寂しそうな表情をしているところを見ると、私はお姉ちゃん一人に全てを背負わせてしまっているという現状に胸の奥が苦しくなる。


 何で関係ない人達の分までお姉ちゃんが背負わなければならないのか。


 確かに、北条グループに勤めている以上全く関係ないといえば嘘になるのだが、それはあくまでもビジネスでの関係であり、会社が傾いて職を失うのは確かに可哀想ではあるものの、だからと言ってそれをお姉ちゃんが西條祐也と婚約してまで庇う必要があったかと言われれば、私は無いと思っている。


「それが……」

「それが?」

「それが何もされてないのよ」

「うんうん、やっぱりアイツはクズなんだか……ら? はい? 何もされてない? そ、そんな馬鹿な……」

「うん。 何もされてないの。 私も昨日はいつ西條がやってくるかって気が気じゃなかったし、そのせいで一睡も出来なかったけど、結局何もされなかったわ。 でも逆に何もされなかったと、ほっとしたと同時にそれはそれで何だか私には女性としての魅力がないと言われているみたいで少しだけ腹が立つわね……」


 このお姉ちゃんの話だと、嘘をついている感じも無いし、どうやら本当にお姉ちゃんはアイツから何もされていないようで、どうやら今お姉ちゃんの顔色が悪いのは単なる寝不足だからみたいである


 そんな事、あのクズに限ってあり得ないと思うのだが、実際にされていないのだから不思議で仕方がない。


 そこまで考えた時、私は最悪の答えにたどり着いてしまう。


「も、もしかして私たち姉妹の初めてを同時に奪う為にあえて昨日はお姉ちゃんを襲わなかった、とか?」

「何言ってんのよ。 莉音が今ここにいるのは莉音が暴走して突っ走ったせいでしょう」

「そ、それはそうだけどさぁ、警戒して損はないんじゃない?」


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