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胸糞イベントが発生する分岐点

 そう喋る美咲は、まるで大切な思い出を話すような表情をしていた。


「あの時の地獄から助けてくれたのは西條祐也様ただ一人だけです。 そして祐也様は私のお母様と共に西條家の家政婦として引き取っていただき、さらにお給金だけではなく住む場所までご用していただきました。 他のクラスメイトや担任達は見て見ぬふりで何もしてくれませんでした。 そして高等部に上がった今も尚、私にはひと言も声をかけに来てくれません。 そんな方達と私は友達になりたいとすら思った事は一度たりともないのです。 なので私は祐也様の隣がいいのです」

「……そうか」

「そうなのです。 そもそも祐也様は考えすぎな所があると私は前々から思っていたんですよ? ここ最近は吹っ切れたのかまだマシになって来ましたが、つい最近まではいつか潰れてしまわないかと本当に心配してたんですからね?」


 そしてどうやら西條祐也の悪役キャラが無理して演じていた事が、この側仕えには全てお見通しであったようである。


 まぁ、毎日一番近くで仕えていたのだから当たり前か。


 もし、このことを西條祐也本人が知ったらきっと顔を真っ赤にして否定していただろう。


「まぁ、その話は置いておいて、これからもよろしく頼む」

「はいっ! 任せてくださいっ!!」


 そして俺と美咲はこの後三十分ほど雑談をしてマックを出るのであった。





 深夜、使用人達も寝静まった丑三つ時。


 俺は一人とある繁華街の路地裏へ向かっていた。


「確かあのイベントは今日だったはず……」


 というのも今日の深夜、北条が西條と婚約するルートでは北条の妹、北条莉音が姉である彩音を助け出す為に深夜西條家に乗り込もうとするのだが、そこで近道しようとした繁華街の路地裏でガラの悪い男性に捕まりエロゲ特有のイベントが発生するのである。


 ちなみにここで妹である北条莉音を助ければ、莉音ルートに進み、助けなければそういう胸糞イベントが発生する分岐点が発生する。


「ねぇ嬢ちゃん。 俺と気持ちいい事しようぜ?」

「何ですかっ!? やめて下さいっ!! 今私は急いでいるのですっ!!」

「おいおい、お兄さんそんな事を言われたら悲しいじゃないか。 これはもうお兄さん傷ついちゃったな。 慰謝料五千万は頂かないとな」

「ば、馬鹿じゃないんですかっ!? それに、五千万なんて払えるわけないじゃないですかっ!!」

「払えないなら、身体で払って貰わないとなぁ」


 そう、まさに目の前の光景のようなイベントである。


「おい」

「あ? 誰だお前。 今良いところなんだから邪魔すんなよ。 あっち行け、あっち」

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